二年に進級してからも曖昧な空気が続いていたある日、夏に行われた林間学校のコテージで予知夢を見た。
大きな音が辺り一帯に響いて振り向くと、宿泊しているコテージに軽トラックが突っ込んだ。怪我人まではわからない。その直後、隣で私の名前を呼ぶ声が聞こえて目覚めた。
ひどくうなされていたようで、さっちゃんが起こしてくれたらしい。冷や汗が止まらなくて、しばらく眠れずに部屋の隅で布団に包まって朝を待っていた。寝不足で倒れることになっても、目を瞑ることが恐ろしかった。
林間学校から帰ってきた三日後、泊まっていたコテージに軽トラックが突っ込んだらしい。幸い軽い怪我で済んだけど、人が傷ついたことに変わりはない。もし林間学校が三日も遅れて行われていたら、クラスメイトの誰かが巻き込まれていたかもしれない。朝のホームルームで「林間学校中に起きなくてよかったな。きっと日頃の行いが良いからだ!」と担任の先生が笑い飛ばしたけど、クラスの大半が乾いた笑みを浮かべていた。笑い事じゃないことは高校生でもわかる。
ニュースを聞いて、さっちゃんが問い詰めてきたのはその日の放課後だった。
うなされていたときの様子をずっと気になっていたようで、何度「大丈夫だよ」と言っても一歩も引いてくれない。大好きなクレープを片手にさっちゃんは言った。
「まだ出会って二年もないけど、凛花のことをもっと知りたいの。だから一人でどうにかしようと思わないで。私を頼って」
この時、たまにしか見ない予知夢は、次第に鮮明に映るようになっていた。場所、人、その日の太陽の位置。気温ですら感じ取ってしまう。
さっちゃんにすべて打ち明けると、誰にも話さないと約束してくれた。いつも一緒にいる千佳には「寝つきが悪い」ということにして、予知夢は二人だけの秘密になった。少しだけ気が楽になったけど、仲良くなったことで新たに悩みも増えた。
「溝口って、凛花といるとき楽しそうよね」
「……そう、かな」
羨ましいと言いたげなさっちゃんの言葉に、私は曖昧に返事をして視線を逸らした。
学級委員の時に一緒になったのをきっかけに、さっちゃんは小太郎を好きになったらしい。それが彼女からの皮肉だったのか、それとも私が醜く受け取ってしまったのかはわからない。
ただ、それ以上は笑って誤魔化すだけで、何も話したくなかった。