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 高校に入学して、また小太郎と同じクラスになった。クラス替えがないことをホームルームで知って、私はふいに彼の方を見てしまう。不本意ながら苦い顔をしていたのを見て、少しショックだった。私はすごく嬉しかったんだけどな。

 クラスメイトと一緒にいる時間が増えれば増えるほど、私と小太郎が幼なじみであることを周知されていった。

「なんか素敵だね、幼なじみでずっと一緒なんて」

 まだ少ししか話したことのない子がそう言うと、近くにいた男子が彼を茶化し始めた。

「溝口、もしかして高校も一緒になるようにしたんじゃねーの? 保育園から一緒って、絶対おかしいだろー!」
「はぁ? 古賀(・・)はただ家が近所なだけで、合格してたのだって知らなかったんだ。そんなことできるわけがない」

 いつもより苛立っている小太郎の声に、茶化していた男子が怯む。じろっと睨まれたその光景はまさに蛇に睨まれた蛙のようで、いたたまれなくなった男子はそっとその場を後にした。

 多分照れ隠しだったんだと思う。入学する前までずっと名前で呼んでくれたのが恥ずかしかっただけで、誤解がないように言ってくれただけなのに、呼び方一つで突き放されたような気がした。