「無理すんなよ。どうせ不合格が悔しかったことより、おばさんにどう説明しようか考えてたんじゃないの?」
「……私、別に悔しくないよ」
「わかってるよ」
「ただ努力が足りなかっただけ――」
「お前が頑張ってたの、誰よりも知ってるから」
「……っ」

 お母さんに勧められて決めた志望校――それでも憧れはあった。自分には無理だとわかっていたからこそ、誰よりも努力した。口先だけかもしれない。私よりももっと努力している人がいるから、簡単に皮肉なんて言えない。私はこの悔しさも全部、飲み込むことしかできない。

「私、頑張ったもん」
「そうだな、頑張った」
「頑張った……っ」
「じゃあ、もう片方の高校で、今想像している以上に楽しい三年間を過ごせばいいじゃん」

 どうしても入りたいなら止めないけど、と切り捨てた。

「おばさんに言うの、ついていってやろうか?」
「……いい。自分で言う」

 受験に向かう私を励ましてくれたお母さんにお礼を言う。こんな当たり前のことを他人任せにする必要はない。胸を張ってありがとうって伝えればいい。

 それに行きたかった高校への期待はすでに高まっている。第二志望の高校は、小太郎が受かった高校なのだ。知らずに受験してたから本当に偶然だったけど、これでまた三年間同じ学校なら、彼と一緒なら大丈夫だと確信した。

 ずっと手のひらで転がしていたココアの蓋を開けてぐいっと飲む。そんなに時間は経っていないのに温くなっていた。いつもよりも甘かった。