高校受験の合否が夢に出てきたときは本当に心臓に悪かった。ずらりとならんだ受験番号に私のものはない。発表の三日前のことだった。

 第一志望はお母さんが通っていた女子高。元々勉強は得意じゃないのに「あなたにはここに行ってもらいたいの」と学校説明会の資料を渡された。行きたかった高校よりも難易度が高い進学校は、校風やカリキュラムが魅力的だったからダメ元で受験した。別の日程で受験していた第二志望の高校からはすでに合格を貰っていたから、気楽な気持ちで受験をしてきた。自己採点をした段階でギリギリのライン。だから掲示板を見るときは何度も確認した。でもいくら掲示板を見ても、私の受験番号は書かれていない。まさに夢で見たことが現実に起きたのだ。周りが歓喜の声で溢れる中、人混みに逆らって颯爽とその場を抜け出した。

 お母さんは「絶対に合格するから」と今日まで尽くしてくれた。そんなお母さんになんて報告したら良いのか、掲示板の受験番号を探す時よりも集中して考える。
 いつもより遠回りをしながら考えていると、偶然小太郎と出会った。おばさんに頼まれた本の受け取ってきた帰りらしい。

「凛花? 今日って合否発表じゃ……って」

 その時の私は、随分酷い顔をしていたんだろう。ぎょっとした彼は近くの公園のベンチに私を座らせると、自販機でココアを買ってきて私に差し出した。ぎこちない手つきで受け取ると、小太郎は自分の分のココアを両手で転がしながら隣に座る。

「どうだった? ……って聞かなくてもみればわかるか。あの女子高だろ。よく行こうと思ったな」
「だ、ダメ元だもん! 少しくらい高みを目指したって……」

 ぺしっ、と私の額を小太郎が指で軽く弾く。
 私が塞ぎ込んでいる時、小太郎は決まって私の額を指で弾く。――幼い頃からずっと同じだった。なんで額なのかと訊けば、「頭を叩くと勉強した分が消えていくかもしれないだろ」としれっと悪態をつかれた。それがその場を切り抜けるための文言なのは私でもわかった。その証拠に、爪が当たって痛いからやめてと言ったら、短く切り揃えてきた。
 そんなところにマメさを出さなくたっていいのにね。