「そうだ、溝口くん。おめでとう」
「……は?」

 突然何を言い出したのか。袋を破ろうとしていた手を止めて凛花を見る。少し寂しそうに笑いながら彼女は続けた。

「さっちゃん可愛いし優しいから、大事にしてあげてね」

 一体何の話かと思ったから、どうやら青山と話していたのを、告白だと――実際に告白だったが――受け取ったらしい。

「……お前、どこから聞いてた?」
「聞いてたというか聞こえてしまったというか……『好きだった』って、さっちゃんが告白しているところは聞いちゃった。あ、他は何を話していたのか聞いてないよ! 早口だったし、距離が遠くて聞こえなかったし!」
「随分正直に話したな」
「きっと、隠しても無駄だと思って」

 溝口くん、先読みしていそうだし。とそっぽを向いて言う。
 ちょっと拗ねたような言い方なのは、青山に嫉妬でも抱いているのだろうか。凛花の顔をこちらに向けさせると、額を軽く弾いた。

「いっ……!」
「バカか」
「ちょっ……いきなり何するの!?」
「勝手な思い込みで物事を進めるな。告白されたようなモンだけど、過去形だったから。結果的に俺が振ったことになってる」

 そう言うと、凛花は口に運ぼうとしたラムネのアイスを寸前で止めて固まった。

「……え? ええ!? あんな可愛い子の告白を棒に振るとか、溝口くんバカなの!?」
「バカでもいいよ。……だから、その作り笑いやめろ」

 小さく溜息を吐いて言うも、凛花は何を言っているのかさっぱりわかっていなかった。途端、自分の頬に涙が零れたのに彼女が気付くと、頬を拭いながら不思議そうに首を傾げる。

「あれ……なんで? なんで私……」
「なんでって、こっちが聞きたいよ」
「う……でも、わからなくて」

 なんでだろうね、と悪ふざけをしたように笑いながら目を擦る。それでも涙は止まらない。
 小さく溜息をついて凛花に言う。

「何が不安なの?」
「え……」