凛花はラムネのアイスを食べながら答える。

「もちろん、さっちゃんが教室に来たよ。そしたら溝口くんがどこか行っちゃったって聞いたから、補習の先生と入れ違いで出てきたの。それにしても足早いんだね。全然追いつかなかったもん」
「じゃあなんで……」
「んー……幼なじみレーダーとか?」
「…………」
「そんな冷たい目をしないでって。ほとんど勘で来たんだよ。それに溝口くん、暑いの苦手でしょ? だからこういう、木々が生い茂ったところかなぁって」

 最初から知っていたかのようにあっけらかんと答えると、凛花はまた一口、アイスを頬張った。

 それを聞いてふいに、事故当時のことを思い出す。あの日も同じように凛花は俺の後を追ってやってきた。それが事故に遭うのを防ぐために追いつく必要があったのだと今ならわかる。

「それに溝口くん、知らないうちにどこか遠くに行っちゃいそうなんだもん。実際、学校を抜けてここに来ちゃったし。だから私もサボる! 溝口くんもサボるでしょ? 黙っていてねっていうお駄賃で、私からアイスの奢りです!」
「堂々とサボる宣言するな。入院中の遅れはどうすんだよ?」
「それは後で溝口くんに教えてもらう」
「なんだそれ……」
「でももう受け取ってくれたでしょ? 君も共犯だからね」

 アイスを持つ逆の手で、俺に渡してきたアイスを指す。ちゃっかり俺の好きなバニラアイスを買ってくるからして、やはり記憶を無くしても本質は変わらないと改めて思う。

 ベンチに座り直し、アイスの袋を開けようとすると、凛花が唐突に言う。