「……つっめた!?」

 突然、頬に何か冷たいものを当てられた。水滴が頬に張りつくと、驚いてベンチから崩れ落ちる。ひんやりとした場所を擦りながら顔を上げると、なぜかコンビニの袋を持った凛花が背もたれに寄りかかるようにして楽しそうに笑っていた。

「おまっ……え? 何してんの? 補習は?」
「サボってきた! はい、どーぞ!」
「どうぞって……」

 凛花がコンビニの袋から取り出したのは、いつも俺が食べているあのバニラアイスだった。呆気に取られながらもアイスを受け取ると、凛花は隣に座ってラムネ味のアイスバーを食べ始めた。彼女の額にうっすらと汗が見える。

「今日も暑いねぇ。この公園、よく来るの?」
「……いや、初めてだけど」
「え? そうなの? いい公園だね。日光浴できそう」

 凛花が周りを見渡すのを見て、立ち上がりながら周りを見る。
 無意識に立ち寄ったのは自然公園だったようで、大きなスギの木がいくつも並んでいる。ちょうど座っているベンチは木々の葉の下にあり、太陽の日差しから守るようにして日陰を作っていた。

「近くにスギの木があるから、花粉症は辛いだろうな」
「え? じゃあここで皆で花火とか難しいか……。佐山くん、確か花粉症だって言ってたから……」
「まずここ、火気厳禁だから。……なんで俺がここにいるって分かったの? 後をつけてきたわけじゃないんだろ?」

 俺が学校を出たのは、青山が教室に向かう後ろ姿を見送った後だ。教室までは行っていない。不本意だったとはいえ、その後も近くで聞き耳を立てていたとは考えにくい。