出会ったのはいつだったのかと問われたら、「気づいたらそこにいた」が正しいかもしれない。

 あの頃から凛花は活発で、一緒に公園へ行けばボール遊びからアスレチックまで、誰よりも先に駆け寄って遊んでいた。そんな彼女も虫は苦手のようで、背中にてんとう虫が止まったときは泣きながら走り回る姿を見ては、仕方なしに取ってあげていたっけ。

 反対に、当時の俺は泣き虫だった。

 特に小学生の頃はクラスの中で一番背が低くかったことをきっかけにいじられる対象にされて、いつも泣いていた。クラスメイトは単純に「楽しいから」という理由で茶化していたが、当時の俺にとっては恐怖でしかない。

 担任の先生は「じゃれている」のだと勘違いしてクラスメイトに注意せず、「皆、小太郎くんと仲良くしたいんだよ」と言い聞かせるだけ。次第に学校に行くのを拒び、休みの日でも家に引きこもってしまった。

 そんな時、いつも傍にいたのが凛花だった。

『泣いたっていいよ。泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑うの。すっきりしたら、自然に笑えるから』

 それからの凛花は、意地でも引きこもる俺を根気強く家まで迎えに行き、手を引いて一緒に学校に行くようになった。彼女から話を聞いた俺の両親は、担任に掛け合うなどして学校に行けるように手を尽くしてくれた。

 少々強引な方法だったが、周りも茶化すのをやめて謝ってきたりして、それからは問題なく登校するようになった。今の俺が小学校に限らず、学校に通えているのは紛れもなく凛花のおかげだ。

 だから凛花が何か思いつめていると、率先して話を聞いていた。
 彼女のように大っぴらには動けなかったから、好きなアイスを渡して、少しでも気を紛らわせて話を聞き出す。あの日助けてくれたように、自分も凛花の支えになりたいと強く願っていた。


 今になって思う。――あの時、自分が飛び出せばよかったんだ、と。