青山と別れて、教室に行くことなく学校を飛び出した。
 補習を休んで怒られるくらいなら、今もなお混乱している自分の頭を整理したい。教科書やペンケースが入ったリュックをガチャガチャと鳴らしながら真昼の歩道を走った。途中ですれ違った人がこちらを見て驚いた顔をしていたけど、それほど俺の顔が酷いものだったのだろう。

 そのまま家には帰らず、近くの公園に立ち寄って日陰があるベンチに座った。昼時だったこともあってか、公園には夏休み中の親子が何組かいて、ベンチから離れた場所にあるブランコや滑り台で遊んでいる。楽しそうにはしゃぐ子供たちの笑い声は蝉よりも響いていた。

 乱れた呼吸を整えながら背負っていたリュックを横に置いて一息つく。ふと見上げると、今日も雲ひとつない晴天で、高い空に浮かぶ太陽がギラギラと地面を照りつけているのが憎たらしく思えた。

「……暑い」

 項垂れるように呟く。比較的静かな場所なら少しは落ち着けると思ったが、期待外れだった。

 叩きつけられるように出された答えを、凛花に確かめる勇気がない。
 それが事実だと受け止められなかった。凛花が自分のために命を差し出したなんて信じたくない。人の不幸しか予知しない夢を見てきたことも、俺が事故に遭うことを知って追いかけてきたことも全部、悪い夢だったと誰かに言ってほしかった。

 冷静になるほど信じたくない事実にぶつかってしまう。あんなにうざったく感じていたセミの鳴き声が、考えを紛らわせてくれる唯一の救いだった。

「――――見つけた!」