青山が話してくれたのは、凛花がずっと隠してきた秘密であり、悩みの種だった。

 聞いたところによれば、それは毎日見るものではないらしい。さらに三日後に起こるのは日によって大きく偏っていた。

 たとえば、ある日の夢では、受けたテストが三日後に戻ってきたらすべて赤点だった。またある日は一週間の天気予報で三日後は晴天だったのに、一日中大雨だった。天気に関しては自然のことだから、大きくズレていてもおかしくはない。

 しかし、今まで夢に出てきたものには、ある共通点がある。

「誰かが、不幸になる夢……」
「誰かが怪我をするとか、通勤ラッシュ時に電車の飛び込み事故が起きるとか、見たくも知りたくもない出来事を見るんだって。……溝口、幼なじみなら心当たりない?」
「……そういえば」

 幼い頃、凛花が飼っていたハムスターが亡くなる三日前から前日にかけて前日には公園で花ばかり摘んで集めていたし、いじめっ子がジャングルジムから落ちて骨折すると教えてくれたのは三日前だった気がする。夏休み前にあった数学の小テストだって、別のクラスの問題が出されたことも、凛花は「何となく出るような気がして」解き方を聞いてきた。

 何かが起こる前兆を、すべて夢で見たことがあるとしたら――?

「今の凛花は、予知夢を見ているのか聞いたことはある?」
「変な夢を見るとは言ってたわ。私と話すときは予知夢ってちゃんと言うから、多分事故のショックと一緒に忘れているんだと思う。……でも時間の問題ね。きっと近いうちに気付いてしまうかもしれない」

 今はぼんやりとしているその夢がいつか現実に起きるものだと分かったら、また凛花は悩み、苦しむのだろうか。だんだんと凛花の今までの言動を思い出すほど、青山の話が現実味を帯びていく。実際に仲介人のような謎の人物と凛花が関わっていることを考えたら、可能性は捨てきれない。

「青山、それっていつからあったか聞いたことはある?」
「小学生の頃としか聞いてないわ」
「なら、それより前からあったかもしれないってことか」

 青山は首を縦に振った。

「溝口が気付かなくても仕方がないよ。だってご両親にも話していないって言ってたもの。お母さんが厳しい人だから、多分言ってもわかって貰えないものだって思ったんじゃないかな」

 その時の様子が忘れられないのか、青山の手が小さく震えていることに気付く。