「予知夢って、未来の出来事を予測するっていう夢?」

 突然何を言い出したかと思えば、予知夢なんて誰もが見れるようなものじゃない。訝しげに言う俺に対して、青山は続けた。

「予知夢というより、正夢の方が近いかも。きっと溝口も遭遇したことがあると思う」
「夢の中での出来事が現実に起こる……? そんなことが本当にあるのか? それに遭遇って、たかが夢だろ。そう簡単に当たるわけ……」
「当たるのよ。怖いくらいに」

 食い入るように青山が言う。真剣な表情からはひどく怯えているように見えた。俺が考えている以上に、ただごとではないことがひしひしと伝わってくる。

「……その予知夢と、凛花が関係しているのか?」

 こくん、と頷く。微かに震えた唇から、ゆっくりと告げられた。

「私が教えてもらったのは、二年の林間学校のとき。同じコテージで寝てたら、夜中に凛花がうなされてることに気付いたの。慌てて起こしたんだけど、顔が真っ青だった。聞かない方がいいと思ってその時は聞けなかった。でもその三日後、あのコテージで事故が起きた」

 それには覚えがある。昨年の夏、林間学校から帰ってきた三日後の話だ。
 コテージの掃除に訪れていた管理人が軽トラックのハンドル操作を誤り、コテージに突っ込むという事故があった。運転していた管理人は軽症で済んだものの、コテージは半壊しかけたらしい。ホームルームでその話が上げられると、担任の先生は「林間学校中に起きなくてよかったな。きっと日頃の行いが良いからだ!」と笑い飛ばした。つられて乾いた笑みをした生徒はいたが、俺には笑えない話だった。

「あの話を聞いて、夜中に凛花がうなされてたことを思い出して問い詰めたの。……そしたら、予知夢のことを教えてくれた」
「……まさか」
「凛花はね、三日後に不幸な出来事が起こる夢を見るらしいの」