「……え?」

 すき?

 思わず耳を疑った。漢字変換さえできず、困惑する頭で青山の話を聞く。

「一年の時、学級委員を一緒にやったの覚えてる?」
「……ああ、じゃんけんで決めたっけ」

 入学当初、クラスメイトの顔もあまり覚えていない中で学級委員を決めることになったとき、男女から一名ずつ選出することになった。女子は話し合いで決定する中、男子は強制的にじゃんけんで勝った人はなるという、なんとも理不尽極まりない決め方をした。

 結果、多くの推薦で決まった青山と、じゃんけんで勝ち残ってしまった俺が一年間、学級委員をすることになったのだが、その時からあまり話すことをしていなかった気がする。

「不服そうな顔をしながらクラスをまとめていたでしょう? 凛花と一緒だと平気な顔してるのに、私と一緒だったから嫌だったのかなとか思ってた。でもクラス内での話し合いで何も出なかったとき、率先して出してくれて、悪ふざけをする男子とかも押さえてくれて……見直したの」
「それは、ああでもしないと終わらなかったから」
「そうね。でも嬉しかったの。それから一年一緒にやってて、気付いたら好きになってた」
「……そう、だったんだ」
「最初から眼中になかったのは知ってるわ。だってアンタ、ずっと凛花のこと見てたでしょ。いろいろ頑張って話しかけたけど、全然相手にされないんだもの。凛花と話しているのを見たとき、初めて楽しそうに笑ったのを見て驚いたんだから」

 入学当初は人見知りを発揮していたこともあって、極力人を避けていた時期がある。その時でも話せたのは凛花と、佐山たちくらいだろう。
 自分の顔は鏡がない限り見えない。だから自分があの時誰に、どんな顔で接していたかなんてわかるはずがない。