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 八月に入った。
 お盆に入る前の一週間、希望した生徒のみが参加する補習のため、何週間ぶりに登校することになった。すでに専門学校のAO入試を受けた生徒が合格を貰ったようで、「お前らも続けよー!」と激励という名のプレッシャーをかけてくる。

 希望する科目だけなので、一週間毎日通うことはない。だから休み明けまで会わない生徒もいれば、佐山のように赤点続きで全日程にいる生徒もいる。

 俺が希望する科目は補習の二日目に固まっていた。リビングの窓から、ちょうど制服姿の凛花とおばさんが仕事で家を出るおじさんを見送っていたから、きっとアイツも来るのだろう。入院中の遅れを取り戻したいと、休み前に補習確定の佐山に言っていたっけ。とにかく、おばさんに気付かれないように時間を早めて、そっと家を出て学校に向かう。

 補習が始まる一時間も早く着いてしまったと呆れながら昇降口に行くと、青山と遭遇した。

 遊園地の時以来、会うこともなかったため、居心地の悪い空気が流れる。お互い顔を合わせると黙り込んでしまった。しばらく遠くから蝉の鳴き声がやけに近くに聞こえてくることに嫌気がさすと、青山がぎこちなく口を開いた。

「ちょ、ちょっと私に時間くれない?」
「いいけど……今?」
「ええ。さっさと終わらせた方がお互いの為でしょ?」

 そう言って青山は校舎の中に入っていく。慌てて靴を履き替え、後を追うと非常階段に着いた。