「長い髪の毛、マフラーに絡み付いてた」

「やだぁ~、完成したとき首に巻いたりしたのバレてるぅ~!」

「そうだと思ったぜ、トリートメントの香りもするしな」

「もしかして…… 春樹くん、うれしいのかな~!」

「なに言ってんだ、付き合いきれん……」


 遅れていたバスが到着して、乗車口の扉が開く。
 並んでいた列を無視して割り込み、春樹にバックハグしたままの妹は……
 背後から抱きついた状態で、彼と一緒にバスへ乗り込んでいった。


 私はその場に棒立ち、走り去っていくバスを見送る。


 唇を噛みしめ怒りに震えながら、強い憎しみと怨みを膨らませていた。



 まるで、悪霊にでもなっていくかのように……