まさか、春樹の首に巻かれているのは!


 クリスマスにプレゼントしようと思っていた、手編みの白い毛糸マフラーじゃないですか!
 しかも、すごく似合っててカッコイイ!

 完成してから私の首に何度も巻いたり、パジャマ姿でマフラーを巻いたまま布団の中で寝てしまったこともあった。
 彼の喜ぶ顔を思い浮かべながら、瞳を閉じて頬摺りしたマフラーを春樹が使ってる。

 私は両手で口元を隠し、顔を赤く染めながら彼の様子を見つめていた。
 すぐそばに私がいても、幽霊だから気づかれてない。

 春樹は寂しそうに目を細め、事故があった交差点に視線を向けている。

 何も言わずに、直立したまま口を噤む春樹。
 少しの間、その場を動こうとしなかった。


 目を見開き、踵を返して私に背を向けると静かに彼が歩き始める。


「春樹、ちょっと待って!」