「ああっ! お姉ちゃん毛糸のマフラー編んでるの?」
妹に見つかってしまった。
自分の部屋でこっそりと編んで、完成させたかったのに。
妹が扉をノックしないで急に入ってくるのは、いつもの事なんだけど……
「ちょっと、私がマフラー編んでること誰にも言わないでほしいのよね」
「わかったよ、お姉ちゃん」
そう言ったまま、立ち去らない妹。
長年、同じ家でいっしょに暮らす姉と妹なので、嫌な予感を感じ取ってしまう。
私は作業の手を止めて、編みかけのマフラーを膝の上に置いた。
目を細めて睨むように見つめてくる妹は、顔の表情を不機嫌にしている。
そして、いつもより声のトーンを低くしながら私に向けて話しかけてきた。
「その手編みマフラー、誰にあげるのかな……」