プールから上がると、水を含んだ制服が肌にまとわりつく。予測できたこととは言え、気持ち悪い。

 ブレザーやらスカートやらを絞って、ちらり月瀬を見る。


「濡れちゃったね。この後どうするの?」

「うん……まぁ仕方ないよね」


 月瀬はこの後、みんなのところに戻らないといけない。びちょびちょに濡れた姿で。

……あれ? そういえば……。

 あの夏の日も。集合がかかってクラスのみんなが集まる中、月瀬はなぜか全身濡れた姿で現れた。


『お前どうしたんだよ、それ!』

『プールに落ちた』


バッカだなー、なんてみんなで笑い合ったっけ。……。


「月瀬」

「ん?」

「もし私が元に戻って、月瀬が今日のことを憶えていたら」

「うん」

「『おかえり』って言ってほしい」


 戻れる保証も、これが夢じゃない保証も何もないけれど。もしかしたら月瀬はずっと……。それを確かめたい。


「わかった」


 その言葉を最後に、私の視界から月瀬が消えた。……違う。月瀬の視界から、私が消えた。