今日、私は高校生活を終える。
思い返せば、楽しかったと言える日々だった。部活に明け暮れた毎日。休みなく行事に参加できたし、二年生のときには文化祭実行委員も経験した。
思うようにいかなくて辛いこともあったけれど、過ぎ去ってみれば思い出の一ページにすぎないと思える。
たった一つの後悔を除いては……。
卒業祝いの花を胸ポケットにつけたクラスメイトたちが、各々談笑する教室。心なしかみんなを取り巻く空気が弾んで見える。
そんな教室内で、私の視線は、夏野と狭山さんを発見した。お似合いって幾度となく言われた二人は、当たり前のように微笑み合う。
夏野は誰にだってその無邪気な笑顔を向ける。彼女の狭山さんにも友達にも……私にも。
あの夏、私が引き止めていたら……。あのとき、気持ちを伝えていたら……。もしかしたら、隣にいたのは私だったかもしれない。
だけど、あの日には戻れない。その後悔は、後悔のまま私の中に留まり続ける。
ふと、二人の姿が歪んだ。意識が遠のく感じがして。身体が、落ちる。
倒れた私が最後に見たのは、
「吉葉!」
私の名前を叫ぶクラスメイトの月瀬の顔。
教室内が秩序を形成するようにざわついて。そこで私の意識がぷっつり途絶えた。