と答えた。黒い影に招じられるままに、丸山と土岐は扉の中に入った。家の中も薄暗かったが、物の輪郭は鮮明に見えた。陰影に刻まれた笑顔はシュトゥーバだった。
家の中は蒸し暑かった。漆喰の壁はひんやりとしていて、電気の配線が剥き出しだった。土岐と丸山は玄関を入って右の居間に通された。中央に事務机のような方形のテーブルがあり、真っ赤な香辛料がまぶされた鶏の丸焼きと山盛りのサラダとぷくっとふくれた平焼きパンが乗っていた。天井から小ぶりの扇風機がゆっくりと回転し、黄ばんだ白熱灯の下で大きな影のゆらぎが狭い部屋を徘徊していた。
土岐と丸山が木の丸椅子に腰掛けると、シュトゥーバが鶏の足先を掴み、いくつかに裂き、それぞれの皿に取り分けた。
「どうぞ」
とシュトゥーバが言う。彼の英語は、訛りがきつくなく、込み入った話でなければ容易に聞き取ることができた。それもあってか、土岐は彼の言ったことをいちいち日本語に訳すことをやめていた。丸山は土岐のヒアリングに問題のあることに気付いたようで、土岐が理解していないと察知すると、それとなくシュトゥーバの言ったことを日本語で独り言のように繰り返してくれた。
「ミスター・マルヤマ、フィジビィティ・スタディは予定通り終わりそうですか?」
とシュトゥーバが骨張った両肘をテーブルにつき、両手で持った鶏肉にかぶりつきながら首をかしげて言う。
「いまのところ、順調です」
と丸山がジャパングリッシュで答える。土岐には彼の英語はほぼ100パーセント聞き取れた。
「ミスター・トキのほうはどうですか?」
とシュトゥーバが土岐のほうにすこしむき出した丸い目を向けてきた。
「たぶん大丈夫だとおもいます」
と土岐はどもりながら答えた。この答えで、土岐の英語のおぼつかないことをシュトゥーバが理解したようだった。
「留学されて帰ってきたのはいつごろなんですか?」
と丸山が話題を変えてくれた。丸山の英語は発音ばかりでなく、構文も日本語をそのまま直訳したようで、きわめて聞き取りやすかった。
家の中は蒸し暑かった。漆喰の壁はひんやりとしていて、電気の配線が剥き出しだった。土岐と丸山は玄関を入って右の居間に通された。中央に事務机のような方形のテーブルがあり、真っ赤な香辛料がまぶされた鶏の丸焼きと山盛りのサラダとぷくっとふくれた平焼きパンが乗っていた。天井から小ぶりの扇風機がゆっくりと回転し、黄ばんだ白熱灯の下で大きな影のゆらぎが狭い部屋を徘徊していた。
土岐と丸山が木の丸椅子に腰掛けると、シュトゥーバが鶏の足先を掴み、いくつかに裂き、それぞれの皿に取り分けた。
「どうぞ」
とシュトゥーバが言う。彼の英語は、訛りがきつくなく、込み入った話でなければ容易に聞き取ることができた。それもあってか、土岐は彼の言ったことをいちいち日本語に訳すことをやめていた。丸山は土岐のヒアリングに問題のあることに気付いたようで、土岐が理解していないと察知すると、それとなくシュトゥーバの言ったことを日本語で独り言のように繰り返してくれた。
「ミスター・マルヤマ、フィジビィティ・スタディは予定通り終わりそうですか?」
とシュトゥーバが骨張った両肘をテーブルにつき、両手で持った鶏肉にかぶりつきながら首をかしげて言う。
「いまのところ、順調です」
と丸山がジャパングリッシュで答える。土岐には彼の英語はほぼ100パーセント聞き取れた。
「ミスター・トキのほうはどうですか?」
とシュトゥーバが土岐のほうにすこしむき出した丸い目を向けてきた。
「たぶん大丈夫だとおもいます」
と土岐はどもりながら答えた。この答えで、土岐の英語のおぼつかないことをシュトゥーバが理解したようだった。
「留学されて帰ってきたのはいつごろなんですか?」
と丸山が話題を変えてくれた。丸山の英語は発音ばかりでなく、構文も日本語をそのまま直訳したようで、きわめて聞き取りやすかった。


