土岐は、7時前にホテルの車寄せで待ち合わせることにして715号室の前で、丸山と別れた。自室に入ってすぐ、シャワーを浴びた。お湯の出が悪く、温度も一定していなかった。突然熱くなったときは、裸のままおもわずバスタブから飛び出した。
シャワーを出てから、母のことが心配になった。連絡先として、扶桑総合研究所の鈴村と砂田の直通電話の番号をメモしてきたが、たとえ何かがあったとしても、母が電話をかけるとは思えなかった。こちらから国際電話することも考えたが、時差の問題とお金の節約のことが頭にあって、掛ける気になれなかった。かりに掛けたとしても電話代のことを気にして、決して喜ばないことは分かっていた。一階ラウンジのコンシェルジェのデスクでインターネットを利用できると館内案内のパンフレットにあったが、母は電子メールをやらない。自宅の8畳間のデスクトップ・パソコンで幾度かやり方を教えたが、聞く耳を持たず、キーボードには触ろうともしなかった。
浴室の洗面台に洗濯用の粉石鹸があったので、ワイシャツと下着と靴下を簡単に洗い、ハンガーに吊るして干した。ランドリー・サービスの案内があったが、時間をもてあましていたので、節約の意味もあって、利用するつもりはなかった。
6時半をだいぶまわってから、土岐は1階に降りて行った。丸山は玄関で待機していた。鼻の穴に小指を突っ込んで、背の高いベルキャプテンとなにやら話していた。土岐と異なり、誰とでも打ち解けられる社交的な性格に見えた。
ベルキャプテンが指笛を吹くと、タクシーが車寄せに飛び込むようにして入ってきた。
ようやく夜の帳が降りはじめ、外気も幾分涼やかな夜気に代わりはじめていた。タクシーにエアコンはない。汗臭いタクシーに丸山とともに乗り込むと、土岐はウインドウ・ハンドルを回して窓をいっぱいに開け放った。タクシーは転がるようにして、首都の郊外に向けて国道を南下した。ほのかに潮の香りがした。
闇が黒煙のように広がってきていた。道路には歩道も街路灯もないので、ヘッドライトの中に突然、闇に溶け込んだような褐色の現地人が現れることがあった。
視界がヘッドライトの届く範囲に限定されているせいか、スピードメーター以上の速度を感じた。目隠しをして走っているような恐怖を覚えた。対向車とすれ違うこともほとんどなかった。
丸山が言う。
シャワーを出てから、母のことが心配になった。連絡先として、扶桑総合研究所の鈴村と砂田の直通電話の番号をメモしてきたが、たとえ何かがあったとしても、母が電話をかけるとは思えなかった。こちらから国際電話することも考えたが、時差の問題とお金の節約のことが頭にあって、掛ける気になれなかった。かりに掛けたとしても電話代のことを気にして、決して喜ばないことは分かっていた。一階ラウンジのコンシェルジェのデスクでインターネットを利用できると館内案内のパンフレットにあったが、母は電子メールをやらない。自宅の8畳間のデスクトップ・パソコンで幾度かやり方を教えたが、聞く耳を持たず、キーボードには触ろうともしなかった。
浴室の洗面台に洗濯用の粉石鹸があったので、ワイシャツと下着と靴下を簡単に洗い、ハンガーに吊るして干した。ランドリー・サービスの案内があったが、時間をもてあましていたので、節約の意味もあって、利用するつもりはなかった。
6時半をだいぶまわってから、土岐は1階に降りて行った。丸山は玄関で待機していた。鼻の穴に小指を突っ込んで、背の高いベルキャプテンとなにやら話していた。土岐と異なり、誰とでも打ち解けられる社交的な性格に見えた。
ベルキャプテンが指笛を吹くと、タクシーが車寄せに飛び込むようにして入ってきた。
ようやく夜の帳が降りはじめ、外気も幾分涼やかな夜気に代わりはじめていた。タクシーにエアコンはない。汗臭いタクシーに丸山とともに乗り込むと、土岐はウインドウ・ハンドルを回して窓をいっぱいに開け放った。タクシーは転がるようにして、首都の郊外に向けて国道を南下した。ほのかに潮の香りがした。
闇が黒煙のように広がってきていた。道路には歩道も街路灯もないので、ヘッドライトの中に突然、闇に溶け込んだような褐色の現地人が現れることがあった。
視界がヘッドライトの届く範囲に限定されているせいか、スピードメーター以上の速度を感じた。目隠しをして走っているような恐怖を覚えた。対向車とすれ違うこともほとんどなかった。
丸山が言う。


