「すいません、お待たせしました。ここのタクシーは電車並みの料金なんですよ。日本のタクシー料金がいかに人件費の塊であるかが分かりますよ」
と丸山は小走りにやって来た。土岐が薄汚れた腰巻だけの二人の少年に見とれていると、
「彼らはつり銭を無心するんですよ。あげてもいいんですけどね・・・たいした金額じゃないから・・・でも、きりがないんでね」
と言い訳のようなことを言う。
店の中は、蛍光灯の照明があるが、五十平米ほどの広さに4本しかなく、薄暗かった。窓がなく、手前と奥の外廊下を越えて外気がそのまま店の中を通り過ぎていた。天井からぶら下がった巨大な黒塗りの扇風機が気だるそうに回転軸で弧を描きながら回っていた。
十一人が三つのテーブルに分かれた。電気関係の松山、浜田、畠山、川野のテーブルの奥に、高齢者の王谷、吉川、山田、高橋のテーブルがあり、出入り口に一番近いテーブルに土岐と中井と丸山が着いた。注文は丸山が取りまとめていた。土岐も彼に注文を任せた。馴染みらしく、白衣のウエイターも他のテーブルに注文を取りに行かない。他の客は見当たらなかった。
料理が来るまで、土岐は中井に簡単な質問をした。
「乗客予測はEUのコンサルタント会社がやった過去の予測を同率の増加率で延長していますが、EUの予測も、GDPの増加とか産業構造の変化を考慮していないんですか?」
中井はその質問ににやりと苦笑した。
「それをやるとなるとマクロ経済モデルを構築しなければならないでしょう。膨大なデータが必要になって、出てきた結果は、鉛筆を舐めて出した予測と大差ないというのが実情で・・・まあ、コスト・ベネフィットを考えれば、あの報告書程度で十分だと思いますよ」
そのあとを丸山が補足した。
「それにもう、中井さんの予測をベースにして、時刻表やオペレーション・システムの構築が動いているんで・・・担当は山田さんですけど・・・」
土岐は丸山の誤解にすぐ気付いた。
「いえ、わたしは、乗客予測を変更すべきと思っているんではないんです。ただ、交通経済学では、マクロ経済分析はしないのかという疑問を聞いただけで・・・」
丸山も自分の誤解に気付いたようだった。昨夜からの柔和な表情に戻った。
と丸山は小走りにやって来た。土岐が薄汚れた腰巻だけの二人の少年に見とれていると、
「彼らはつり銭を無心するんですよ。あげてもいいんですけどね・・・たいした金額じゃないから・・・でも、きりがないんでね」
と言い訳のようなことを言う。
店の中は、蛍光灯の照明があるが、五十平米ほどの広さに4本しかなく、薄暗かった。窓がなく、手前と奥の外廊下を越えて外気がそのまま店の中を通り過ぎていた。天井からぶら下がった巨大な黒塗りの扇風機が気だるそうに回転軸で弧を描きながら回っていた。
十一人が三つのテーブルに分かれた。電気関係の松山、浜田、畠山、川野のテーブルの奥に、高齢者の王谷、吉川、山田、高橋のテーブルがあり、出入り口に一番近いテーブルに土岐と中井と丸山が着いた。注文は丸山が取りまとめていた。土岐も彼に注文を任せた。馴染みらしく、白衣のウエイターも他のテーブルに注文を取りに行かない。他の客は見当たらなかった。
料理が来るまで、土岐は中井に簡単な質問をした。
「乗客予測はEUのコンサルタント会社がやった過去の予測を同率の増加率で延長していますが、EUの予測も、GDPの増加とか産業構造の変化を考慮していないんですか?」
中井はその質問ににやりと苦笑した。
「それをやるとなるとマクロ経済モデルを構築しなければならないでしょう。膨大なデータが必要になって、出てきた結果は、鉛筆を舐めて出した予測と大差ないというのが実情で・・・まあ、コスト・ベネフィットを考えれば、あの報告書程度で十分だと思いますよ」
そのあとを丸山が補足した。
「それにもう、中井さんの予測をベースにして、時刻表やオペレーション・システムの構築が動いているんで・・・担当は山田さんですけど・・・」
土岐は丸山の誤解にすぐ気付いた。
「いえ、わたしは、乗客予測を変更すべきと思っているんではないんです。ただ、交通経済学では、マクロ経済分析はしないのかという疑問を聞いただけで・・・」
丸山も自分の誤解に気付いたようだった。昨夜からの柔和な表情に戻った。


