フィジビリティスタディ

 複写し終えて、自席に戻り、乗客予測の報告書に目を通した。全体は3つのセクションからなっていた。第1セクションが方法論、第2セクションが需要予測、第3セクションが結論になっていた。第1セクションでは、日本で行われている需要予測の方法が説明されていた。その方法はアメリカで考案されたものだという紹介がある。イントロダクションで、需要予測はさまざまな経済指標の推計にはじまり、それに基づいて全体の交通量を予測し、その交通量をさまざまな交通手段に仕訳すると書いてあった。A4で4ページほどの内容だったが、序文として交通関係の世界中のどのプロジェクトにも使えそうな説明だった。中井はどこに行ってもこの序文を使いまわしているのだろうと推察した。序文の次は、このモデルをこの国の国鉄にどのように当てはめるのかが解説されていた。良く読むと、首都から延びる三路線の各駅の区間乗降客数マトリックスは現在の数値に改められているものの、全体の予測はEUのある国のコンサルタント会社が数年前に実施した予測を単純に将来に延長しただけのものだった。さらに、首都から海岸線を北上する路線、南下する路線、内陸に向かう路線ごとに、主要駅間の双方向の現在の乗客数が棒グラフで描かれていた。次に、沿線の人口予測に紙数が費やされていた。首都を中心としてスプロール状に人口が増加して行くことがもっともらしく説明されている。さらに、電化により時刻表通りの運行が可能となり、現在よりも運行速度が高まることから、並行して走行しているバス路線からの乗客の転換が期待されている。この予測については、日本における経験を援用したことが注記されていた。
 ざっと目を通したところで、昼休みになった。丸山の音頭で全員で中華レストランに向かうことになった。移動はタクシーだった。総勢十一人が三台のタクシーに分乗して、十分近く揺られた。中華レストランに到着すると、丸山がすべてのタクシーの料金を支払っていた。土岐は彼が領収書を取り終えるまで、店の中に入らずに、入り口で彼の所作を見守っていた。彼の周りには昨夜空港で見た少年に良く似た男の子が二人いて、彼がタクシー料金を支払うのを凝視していた。
 土岐一人が、店の外で待っていたことに気付いて、