フィジビリティスタディ

「そうですか、それじゃコピーをとらせてもらいます」
と言いながら丸山の方を見ると、腰を浮かして、複写機に向かおうとしていた。土岐は丸山を制して、
「大丈夫です。一人で取りますから・・・」
と言ったが、丸山は首を左右に振る。
「年代物のコピー機で、ちょっとコツがいるんで、最初だけお手伝いします」
 複写機は、トイレのドアの脇にあった。確かに、二、三十年ほど前の複写機のように見えた。一枚取るたびに、蓋の開け閉めが必要で、一枚の複写に十秒近くを要した。用紙も黄ばんだわら半紙のようで、紙質が均一でなかった。ドラムが古いせいか印字もところどころ虫食い状態に潰れていた。
 中井の乗客需要予測の文書は五十枚程度あったが、すべての複写をとるのに十分以上かかった。紙詰まりはしなかったが、時々、軋んだような音を立てるたびに不安にかられた。大丈夫と言いたげに丸山は頷いて見せるが、不安は去らなかった。土岐が一枚ずつ紙を上に乗せ、丸山がその都度、スタートボタンを押した。最後の一枚を取り終えたとき、安堵の思いで、思わず丸山の背中を叩いていた。