フィジビリティスタディ

と言いながら、隣の籐の椅子を土岐に勧める。土岐は、座りながら名刺を差し出して自己紹介した。
「扶桑総合研究所の土岐です。宜しくお願いします」
「はい、よろしく」
と王谷は眼を細めて土岐の名刺を見ながら言う。際立った特徴のない顔をしている。グレーがかったゴマ塩頭が朝陽にきらめいている。それなりに端正ではあるが、人ごみにまぎれたら探し出せそうにない。偉そうな肩書を持っているような雰囲気があった。その王谷の前にパンケーキとポーチドエッグがある。長袖のワイシャツの袖の宝石入りのカフスボタンに朝陽が光っている。
 丸山が右手を上げると、ボーイが小走りにやってきた。小脇に抱えてきたメニューを丸山に渡す。丸山はメニューを開き、体を傾けて、隣席の土岐にも見せた。
「喫茶店のモーニング・サービスに毛の生えたようなメニューしかありませんが、・・・ぼくはアメリカン・ブレックファストで、スクランブル・エッグとベーコンとトーストにします。飲み物はコーヒー・・・土岐さんは、何にします」
「同じでいいです」
 土岐は食べ物にはあまり執着がない。お腹が膨れればそれでいい。両親がそうであったからかもしれない。
 丸山が同じメニューを二つ注文した。土岐にも良く分かる発音で、彼のジャパングリッシュに安堵感を覚えた。自分の英語の舌足らずな発音に、土岐は払拭しきれない劣等感を抱いていたからだ。
「丸山君ね」
と王谷が異様に大きなワイシャツの襟を直しながら話しかけた。
「帰りのエアチケットだけど・・・ファースト・クラスとれた?」
「はい、きのう確認しました」
「大丈夫だろうね。君は、来るときもそう言ってたけど・・・」
と言われて、丸山は椅子に腰掛けなおして背筋を伸ばした。
「すいません。来るときはどうも、こちらの航空会社がダブルブッキングしていたようで・・・」