フィジビリティスタディ

 土岐と丸山とベルボーイの三人で、エレベーターに乗った。フレームが真鍮でガラス張りだった。天井まで吹き抜けの空間が見渡せた。ホテルの一階の中央には熱帯雨林のこんもりとした植栽があり、その周囲を白い大理石の丸テーブルが取り囲んでいた。その上方はガラス張りで、屋上までの吹き抜けになっていた。その吹き抜けを各階の回廊が方形に取り囲み、その回廊に面して客室の入り口のドアがあった。方形の一辺に部屋が5室ずつあり、7階が最上階だった。
 ベルボーイが鍵を開け、部屋の照明のスイッチを入れ、設備を簡単に説明してくれた。訛りのきつい英語で、単語は良く聞き取れなかったが、言いたいことは大体想像がついた。説明が終わってもすぐに出て行こうとしないので、丸山が気付いたように、ポケットから小銭をとり出して渡した。
「さすがにチップは領収書を取れないんで、最少額にしといた方がいいでしょう」
と笑いながら、部屋から出て行こうとした。
「すいません。明日両替したらチップはお返ししますので・・・」
とすまなそうに土岐が言うと、
「いや、わずかなものだからいいですよ」
と予想していた応えが返ってきた。
「いえ、そうはいかないです。・・・それから、プロジェクト・マネージャーにご挨拶をしたいんですが・・・」
と土岐が言いかけると、丸山はすこし逡巡したように、
「・・・まあ・・・明日でいいんじゃないですかね。もう、おそいし・・・720が部屋ですけどね・・・このフロアで一番広い部屋です」
とばつの悪いような笑い方をする。なんとなく、丸山の物言いに含みを感じたので、
「そうですか、それじゃ、ご挨拶は明日にします」
と土岐は従うことにした。
「それじゃ、おやすみなさい。あっ、それから、ぼくのほうでまとめて帰りの飛行機のコンファームをしますので、あす、エアチケットをお預かりします」
と丸山が別れを惜しむようにドアを閉めて消えた。
 土岐はその後をすぐ追った。
「すいません、丸山さん」
 丸山は自室のカギを開けようとしていた。
「プロジェクト・メンバーの一覧表があったら、見せてもらえませんか?」
 一瞬、丸山は、
(なんで?)
というような顔をした。すぐ破顔して、
「まあ、あした、ご紹介しますが、名前だけでも先に知っておいた方がいいかもしれませんね」