すこし、うとうとしかけたときに、聞き覚えのあるS国の首都の名がアナウンスされた。たった一人の初めての海外旅行で、ひとまず無事に目的地に着けそうだという安堵感で、長旅の疲れが癒された思いがした。ずっと水平だった機体が着陸する前に大きく旋回し、傾いた翼の方の丸い小窓の外に、S国の首都の街明かりのきらめきが見えたが、またたく光源は薄曇の夜空のように滲んでぼんやりとしていて、しかもまばらだった。写真で見たことのある香港や熱海や函館の夜景のきらびやかさと比べると、地方都市の場末のようなさびしさだった。
着陸すると、薄暗い照明の中をタラップがにじるように寄ってきて、重そうなドアが軋む音とともに開けられた。次の目的地に継続して搭乗する乗客が多く、降りる乗客は十数名ほどだった。タラップの上に立つと、濃密な湿気を含んだ熱気が圧するように体を取り囲んだ。火を落とした後のサウナのように稠密な湿気が顔面や腕の剥き出しの体表にまつわりついた。あたりは真っ暗で、空港の建物だけが漆黒の闇の中に孤島のように浮かび上がっていた。タラップを降りると、窓もドアもない巨大なゴルフカートのような平たい車が、到着客を待ちうけていた。全員がそれに乗り込むと、車は電気モーターの音と共に急発進して、平屋建ての到着ターミナルに向かった。
入国審査の窓口には、やや黄味がかった白目を褐色の額と頬で際立たせた小柄な男が座っていた。若いのか、そうでないのか、年齢が推し量れなかった。パスポートを提示して、聞かれもしないのに、
「サイトシーイング」
着陸すると、薄暗い照明の中をタラップがにじるように寄ってきて、重そうなドアが軋む音とともに開けられた。次の目的地に継続して搭乗する乗客が多く、降りる乗客は十数名ほどだった。タラップの上に立つと、濃密な湿気を含んだ熱気が圧するように体を取り囲んだ。火を落とした後のサウナのように稠密な湿気が顔面や腕の剥き出しの体表にまつわりついた。あたりは真っ暗で、空港の建物だけが漆黒の闇の中に孤島のように浮かび上がっていた。タラップを降りると、窓もドアもない巨大なゴルフカートのような平たい車が、到着客を待ちうけていた。全員がそれに乗り込むと、車は電気モーターの音と共に急発進して、平屋建ての到着ターミナルに向かった。
入国審査の窓口には、やや黄味がかった白目を褐色の額と頬で際立たせた小柄な男が座っていた。若いのか、そうでないのか、年齢が推し量れなかった。パスポートを提示して、聞かれもしないのに、
「サイトシーイング」


