土岐はもう一度、金井と福原の目が自分に向けられていないことを確認した。それから平生を装って、茶封筒の現金を眼で数えた。十万円あった。しかも非課税だ。報告書提出後に残額の九十万円もらえる。土岐にとっては大金だった。それだけあれば、母の白内障の手術費用が工面できる。眼科医から七十万円ほどかかると言われている。手術さえすれば、母のただ一つの楽しみであるテレビが良く見えるようになるはずだ。そのくらいのことは息子として、してあげたいと土岐はいつも思っていた。土岐の胸の鼓動が速くなった。
土岐は改めて大きい角封筒を見た。千代田区内幸町に本社のある竹内工務店の住所と電話番号が印刷されている。封筒の左上には、
〈ゆうメール〉
という文字も印刷されている。封筒の上部は切り取った跡があり、宛名の土岐の住所と氏名は、ワープロで印字されたものが封筒のハトロン紙の宛先窓口の上に貼り付けられていた。封筒は二次利用されていることは明らかだった。かりに、竹内工務店が差出人であれば、一度、何かで使用した封筒を再利用することは考えにくい。使い回しでない封筒が社内にいくらでもあるはずだ。
(使い古しの封筒を二次利用しているのは、差出人を知られないためか。竹内工務店の封筒を利用したのは、発送時にあたかも、竹内工務店が差出人であるかのように装うためか)
土岐はその十万円をその日のうちに自分名義の銀行口座に振り込んだ。それから事務所のパソコンで、くだんのアドレスにメールを送信した。
@手付金確かに受領しました。提出する調査報告書の内容についてはだいたい理解しましたが、どういう視点から描くべきかということについて、もう少し説明をいただければ幸甚です。土岐明@
送信してから、果たして返信があるものかどうか半信半疑だった。返信があるとしてもいつになるのか皆目見当がつかなかった。返信は夕方、帰り仕度をしていた頃にあった。
土岐は改めて大きい角封筒を見た。千代田区内幸町に本社のある竹内工務店の住所と電話番号が印刷されている。封筒の左上には、
〈ゆうメール〉
という文字も印刷されている。封筒の上部は切り取った跡があり、宛名の土岐の住所と氏名は、ワープロで印字されたものが封筒のハトロン紙の宛先窓口の上に貼り付けられていた。封筒は二次利用されていることは明らかだった。かりに、竹内工務店が差出人であれば、一度、何かで使用した封筒を再利用することは考えにくい。使い回しでない封筒が社内にいくらでもあるはずだ。
(使い古しの封筒を二次利用しているのは、差出人を知られないためか。竹内工務店の封筒を利用したのは、発送時にあたかも、竹内工務店が差出人であるかのように装うためか)
土岐はその十万円をその日のうちに自分名義の銀行口座に振り込んだ。それから事務所のパソコンで、くだんのアドレスにメールを送信した。
@手付金確かに受領しました。提出する調査報告書の内容についてはだいたい理解しましたが、どういう視点から描くべきかということについて、もう少し説明をいただければ幸甚です。土岐明@
送信してから、果たして返信があるものかどうか半信半疑だった。返信があるとしてもいつになるのか皆目見当がつかなかった。返信は夕方、帰り仕度をしていた頃にあった。


