フィジビリティスタディ

〈Mr. Akira TOKI Financial Analysis Specialist〉
と英語で綴られた氏名と肩書きの下に、
〈FUSO RESEARCH INSTITUTE CO. LTD〉
とロゴ入りの社名が入っていた。住所と電話番号とメールアドレスは小文字で小さく刻まれていた。上質紙ではあるが、ぺらぺらのその名刺になんとなく違和感があって、自分の名刺としてしっくり来るものがなかった。受取った名刺は軽かったが、その名刺の社名で粉飾しなければならないかもしれない作業に得体のしれない重さを感じた。
 最後に砂田は、脇に置いてあった紙袋をテーブルの上に置き、
「これをね、お土産で持って行くといいよ。たぶん、あの国には、こうした上質紙やカラー印刷のカレンダーはないはずだから、絶対喜ばれるよ。カルチャーも違うしね」
と言い添えた。中の一本を取り出してみると、今年のカレンダーだった。紙が厚く、ずっしりと重い。四季折々の日本を代表する風景を背に、季節の着物を着た女優が嫣然とたたずんでいる。他のカレンダーもいずれも扶桑総合研究所の東京証券取引所第一部上場の会員企業が作ったものだった。
「あのう」
と土岐が言うと、打ち合わせを切り上げるように砂田が言った。
「そういうことで、よろしく」

 その週末の金曜日の午後、事務所の土岐宛に配送物があった。一階のメールボックスから戻った福原が、
「あら、珍しい」
というような表情で、土岐の手許に宅配便を置いた。滅多にないことだった。厚さ二センチ足らずだった。差出人の名前が書かれてなかった。角封筒には千代田区に本社のある竹内工務店の住所と電話番号が印刷されていたが、土岐には全く心当たりのない会社だった。自席の机の上で、早速角封筒を開けてみた。角封筒の中には手紙と茶封筒が入っていた。茶封筒は封印されていなかったので、すぐ中を覗いた。壱万円札が何枚か入っていた。思わず、大きい封筒に落としこんで、事務室の金井と福原を見た。二人とも知らぬ気に作業をしている。土岐は改めて手紙を取り出した。手紙には次のように書かれていた。