「そのACIが元請けで、われわれは下請けだ。もっともACIはほとんど丸投げで、自前で現地に出向いているのは、プロジェクト・マネージャーとシビル・エンジニアだけだ。このシビル・エンジニアがあんたを現地の空港で出迎えてくれるはずだ。丸山という人だ。ちなみに、プロジェクト・マネージャーは王谷という人で、王様の王に谷と書く。台湾出身の人で帰化したらしい。たぶん、もとの名前は王さんだったんじゃないかな。でもこの人、ぼくの同窓生を異様によく知っている人で・・・探偵みたいな人で、・・・てっきり、おなじ国立大学の卒業かと思ったら、外務省のノンキャリの天下りなんだよね」
かつて土岐が扶桑総合研究所でアルバイトをしていたのは、鈴村の下だった。砂田は、部下を一人も持たないが、課長待遇だった。いつ来ても、たった一人で忙しそうに表計算ソフトに数字を打ち込んで、エンターキーを激しく叩いていた。他の人と共同作業をしているところを見たことがなかった。鈴村の配下にいたということ以外には砂田と土岐との接点はこれまでなかった。
「S国の首都近郊を走っているディーゼル鉄道を電化するというプロジェクトのフィージビリティ・スタディなんだが、一応、結論は、フィージブルということで、お願いされている」
と砂田は、エイジアン・コンサルタンツ・インターナショナルから送られてきた書類を見ながら説明している。書類のタイトルは、
“THE CONSULTING ENGINEERING SERVICES FOR THE ELECTRIFICATION OF THE CAPITAL SUBURBAN RAILWAY NETWORK”
と読めた。内容は熟知しているはずだが、砂田はその書類の上に目を落としたままで、土岐の顔を見ることをしない。それでも時折、目線を上げるが、視線の先は土岐の額あたりに向けられていて、土岐と目を合わせることをしない。砂田の上方に外れた目線と出会うと、目の前にいるのにテレビの画面の中に砂田がいるような変な気分になる。
「ちょっと待ってください。財務分析もしない前から、フィージブルという結論がもう出ているんですか?」
かつて土岐が扶桑総合研究所でアルバイトをしていたのは、鈴村の下だった。砂田は、部下を一人も持たないが、課長待遇だった。いつ来ても、たった一人で忙しそうに表計算ソフトに数字を打ち込んで、エンターキーを激しく叩いていた。他の人と共同作業をしているところを見たことがなかった。鈴村の配下にいたということ以外には砂田と土岐との接点はこれまでなかった。
「S国の首都近郊を走っているディーゼル鉄道を電化するというプロジェクトのフィージビリティ・スタディなんだが、一応、結論は、フィージブルということで、お願いされている」
と砂田は、エイジアン・コンサルタンツ・インターナショナルから送られてきた書類を見ながら説明している。書類のタイトルは、
“THE CONSULTING ENGINEERING SERVICES FOR THE ELECTRIFICATION OF THE CAPITAL SUBURBAN RAILWAY NETWORK”
と読めた。内容は熟知しているはずだが、砂田はその書類の上に目を落としたままで、土岐の顔を見ることをしない。それでも時折、目線を上げるが、視線の先は土岐の額あたりに向けられていて、土岐と目を合わせることをしない。砂田の上方に外れた目線と出会うと、目の前にいるのにテレビの画面の中に砂田がいるような変な気分になる。
「ちょっと待ってください。財務分析もしない前から、フィージブルという結論がもう出ているんですか?」


