そこで、会話が途切れた。鈴村は話題の端緒を探すようにして、ボールペンの先をカチャカチャと出したり、引っ込めたりしている。不意に、思い出したように、
「大学は毎日出勤ということはないんでしょ」
と口をとがらせ気味に確認してきた。鈴村の眼鏡に窓からのあわい外光が反射して、目の表情がよくわからない。
「出講日は週三日だと聞いていますが、・・・なにか?」
「いや、これはまだ確定した話ではないんだけど、ACIの方で、この仕事を縁に、この種のODAがらみの財務分析をうちにお願いできないかと言うんだ。部署的には砂田君のところなんだが、彼は国文科出身なもんで、英語がからきし駄目なんで、もしそうなったら君にお願いしようかと考えているんだ」
土岐にとってはありがたい話だった。心が浮き立つ思いがした。
「休み中であれば問題はないと思うんですが、学期中に休講して、海外出張というわけにもいかないような気がしますが・・・」
「まあ、そうだろうな。授業を休講にして外でアルバイトじゃ、なんのための専任教員か、ということになるだろうね」
「・・・でも、砂田さんが国文科出身ということは知りませんでした。この研究所ではめずらしいですね」
「じつは、いまの財務理事が人事課長のとき採用したんだよ。だいぶ、内部的に反対があったみたいなんだけど、・・・同じ国立大学出身だから・・・まあ、これは本人の口からでたことじゃなくて、推測なんだけどね・・・当時の人事部長が言うには、国文科だから、報告書の校正作業に役立つだろうちゅうのと、卒論が数理統計を使って、古典作品の文体の類似性を論じているから、統計作業やその処理の仕事でつかえるだろうちゅうことで採用したんだ。まあ、いまの財務理事の見た目にそれほどの狂いはなかったけど・・・この二人は太いパイプで結ばれている」
そこでまた、会話が途切れた。
「財務理事って、鈴木さんのことですか?」
「君知ってんの?鈴木さんのこと」
「いえ、知っていると言うほどじゃ・・・」
「大学は毎日出勤ということはないんでしょ」
と口をとがらせ気味に確認してきた。鈴村の眼鏡に窓からのあわい外光が反射して、目の表情がよくわからない。
「出講日は週三日だと聞いていますが、・・・なにか?」
「いや、これはまだ確定した話ではないんだけど、ACIの方で、この仕事を縁に、この種のODAがらみの財務分析をうちにお願いできないかと言うんだ。部署的には砂田君のところなんだが、彼は国文科出身なもんで、英語がからきし駄目なんで、もしそうなったら君にお願いしようかと考えているんだ」
土岐にとってはありがたい話だった。心が浮き立つ思いがした。
「休み中であれば問題はないと思うんですが、学期中に休講して、海外出張というわけにもいかないような気がしますが・・・」
「まあ、そうだろうな。授業を休講にして外でアルバイトじゃ、なんのための専任教員か、ということになるだろうね」
「・・・でも、砂田さんが国文科出身ということは知りませんでした。この研究所ではめずらしいですね」
「じつは、いまの財務理事が人事課長のとき採用したんだよ。だいぶ、内部的に反対があったみたいなんだけど、・・・同じ国立大学出身だから・・・まあ、これは本人の口からでたことじゃなくて、推測なんだけどね・・・当時の人事部長が言うには、国文科だから、報告書の校正作業に役立つだろうちゅうのと、卒論が数理統計を使って、古典作品の文体の類似性を論じているから、統計作業やその処理の仕事でつかえるだろうちゅうことで採用したんだ。まあ、いまの財務理事の見た目にそれほどの狂いはなかったけど・・・この二人は太いパイプで結ばれている」
そこでまた、会話が途切れた。
「財務理事って、鈴木さんのことですか?」
「君知ってんの?鈴木さんのこと」
「いえ、知っていると言うほどじゃ・・・」


