アイキルユウ

「履歴書をみると、佐知子より五歳ばかり年上だから、ヘンサチとほぼ同年齢だ。ただ、二流大学の出身だ。勤務している会社は非上場だが、一部上場企業にしては珍しい同族会社もどきの消費者金融会社の連結子会社だ。男の親族をみると、親会社の会長や社長一族とは無縁のようなんで、たぶん出世は見込めないだろう。年収も親会社ほどはないだろう」
と長谷川は解説しながら、

@出世ばかりが人生ではない。平凡で平穏な人生だって人生だ@

と打ち込んで返信しようとした。手が止まった。
「佐知子の真意がはかりかねるな」
と呟く。つづけて、
「自分にはこういう良縁があるのだということを誇示したいのか。こちらを焦らせて嫉妬させてプロポーズさせようという魂胆なのか。純粋に縁談に関する客観的な意見を求めているのか。しかし縁談の男と天秤にかけていることは間違いないと思うが、どう思う?」
と土岐に聞いて来る。
「どう思うって、君とその佐知子さんがどういう関係なのか、僕は知らない」
「昨日も言ったけど、ここに来るまでは同棲してた」
「結婚の約束めいたことを言ったのか」
「いや。言っていない。ナビ子のことばかり書いていて、縁談の記述があまりにも少ないんでなんとなく、おれの反応を確かめようとしている気がする。佐知子はそういう女だ。どうでもいいことについては、饒舌なくせに、肝心なことになると寡黙になる。おれは、そういう点をまだるっこしいと感じてた。そういう性格でなかったら、とっくに結婚して、ここに連れて来てたかも知れない」
「縁談についてのコメントは書かないで、彼女に判断の材料を与えたらどうだ」
と土岐は適当なコメントを言った。
「そうか。それでおれの思いは伝わるだろう」
と長谷川は長いメールを打ち始めた。