と長谷川が言う。事務所に着く。運転手を待たせた。
「自宅にパソコンがないのは不便な話だが、電力事情が悪いんで仕方ない」
と長谷川がぼやく。机に着く。すぐパソコンを立ち上げる。メーラーを起動させた。
土岐はその傍らに椅子を置いて腰かけた。
「事務所宛のメールは所長に任せるから個人宛のメールだけ開けさせてくれ」
と長谷川が言う。
画面上に巣穴から続々と繰りだしてくるゴキブリのようにメールの件名がぞろぞろと這いだしてくる。80%の開封状況で二百通を越える。90%以上は迷惑メールだ。
「本社のサーバーはさすがにセキュリティがしっかりしている。本社経由の迷惑メールはほとんどない。迷惑メールの大半は地元クライアントとのメール交信を傍受された結果だ」
長谷川は水野佐知子からのメールをうっかり削除の惰性で削除トレイに移してしまった。削除済みアイテムのトレイに移動して読み始める。発信時間を見る。現地時間で午後十一時。傍らで土岐も画面を見ている。長谷川はまったく頓着しない。
@今夜は合コン。つまらない男ばかり。貴方と比べると薄っぺらでパーっぽい連中。一緒に行ったナビ子にはあなたとこの連中の違いがわからないみたい。商業高校をやっと卒業したようなナビ子には知性を実体的に感受することすらできないみたい。貴方のことを、とっても頭のいい人だと彼女に言ったことがあったけど彼女にはピンとこなかったみたい。なんとなく貴方のことが嫌いみたい。きっと彼女には理解できない論理や知らない用語や概念を口にするのが高慢に見えたのね。彼女は自分がどう見られているかということにはとても敏感で、その感性にはわたしもびっくり。人間の能力って不思議ね。彼女、高校時代、暗算のチャンピョンだったのよ。わたし何書いてるのかしら。ナビ子のことはどうでもいいの。昨日書かなかったけど実家の母が縁談を持ってきたの。わたしももうすぐ三十だし、お願いだから三十前には結婚してくれって懇願されたの。相手の写真と履歴書を添付するからあなたの感想を返信して。とても急ぐの。お願いね。絶対よ!いい、絶対よ@
ウイルスやスパイウエアの恐怖に慄く素振りを見せて、長谷川は添付されている写真を開く。画素が少ない。画質が悪い。色の浅黒い面長の精悍そうなイケメンだ。
「どう?」
と長谷川がちらりと振り返る。土岐に聞いて来る。
「自宅にパソコンがないのは不便な話だが、電力事情が悪いんで仕方ない」
と長谷川がぼやく。机に着く。すぐパソコンを立ち上げる。メーラーを起動させた。
土岐はその傍らに椅子を置いて腰かけた。
「事務所宛のメールは所長に任せるから個人宛のメールだけ開けさせてくれ」
と長谷川が言う。
画面上に巣穴から続々と繰りだしてくるゴキブリのようにメールの件名がぞろぞろと這いだしてくる。80%の開封状況で二百通を越える。90%以上は迷惑メールだ。
「本社のサーバーはさすがにセキュリティがしっかりしている。本社経由の迷惑メールはほとんどない。迷惑メールの大半は地元クライアントとのメール交信を傍受された結果だ」
長谷川は水野佐知子からのメールをうっかり削除の惰性で削除トレイに移してしまった。削除済みアイテムのトレイに移動して読み始める。発信時間を見る。現地時間で午後十一時。傍らで土岐も画面を見ている。長谷川はまったく頓着しない。
@今夜は合コン。つまらない男ばかり。貴方と比べると薄っぺらでパーっぽい連中。一緒に行ったナビ子にはあなたとこの連中の違いがわからないみたい。商業高校をやっと卒業したようなナビ子には知性を実体的に感受することすらできないみたい。貴方のことを、とっても頭のいい人だと彼女に言ったことがあったけど彼女にはピンとこなかったみたい。なんとなく貴方のことが嫌いみたい。きっと彼女には理解できない論理や知らない用語や概念を口にするのが高慢に見えたのね。彼女は自分がどう見られているかということにはとても敏感で、その感性にはわたしもびっくり。人間の能力って不思議ね。彼女、高校時代、暗算のチャンピョンだったのよ。わたし何書いてるのかしら。ナビ子のことはどうでもいいの。昨日書かなかったけど実家の母が縁談を持ってきたの。わたしももうすぐ三十だし、お願いだから三十前には結婚してくれって懇願されたの。相手の写真と履歴書を添付するからあなたの感想を返信して。とても急ぐの。お願いね。絶対よ!いい、絶対よ@
ウイルスやスパイウエアの恐怖に慄く素振りを見せて、長谷川は添付されている写真を開く。画素が少ない。画質が悪い。色の浅黒い面長の精悍そうなイケメンだ。
「どう?」
と長谷川がちらりと振り返る。土岐に聞いて来る。


