ベッドから転がり落ちるようにして起きた。シャワーを浴びる。簡単に歯を磨いた。バスタオルを腰に巻く。脱ぎ捨てた下着をホテルが用意した小袋入りの粉石鹸で洗った。軽く絞る。ベランダの庇の下に干す。
使い古した黒いショルダーバックに一泊分の下着と髭剃りを詰め込んだ。それから一階のカフェテリアに降りて行った。
アメリカンブレックファストをオーダーする。最初にアメリカンコーヒー。暫くして、こんもりした白っぽい黄身のサニーサイドアップ、大きさも厚さも不揃いなガリガリのベーコン三枚、あばた模様に焼け焦げたトーストが二枚出てきた。
コーヒーを少しすする。ウエイターが注ぎ足しにくる。
スピーカーから半世紀前にリリースされた映画音楽が流されていた。
カフェテリアの木枠の窓から見える空は薄曇りだった。
そろそろ雨季が始まる。ガイドブックに書かれていた。
湿度が高くなっている。夜露が降りた。窓外の花壇の艶やかな緑の肉厚の葉に細やかな水滴がきらめいていた。トーストにバターを塗る。ベーコンを挟んで食べる。その葉の水滴が小さくなって行った。
コーヒーカップを片手に行雲の動きを眼で追った。
「カフィ?サァ」
と銀色のポット片手にウエイターがやって来た。
もう三杯も飲んでいる。
長谷川が腫れぼったい瞼をしてやってきた。
「やあ、おはよう。どう?よく眠れた?」
「ああ」
と土岐が答える。
ウエイターが長谷川の前のからのカップにコーヒーを注いだ。
「今日、列車で少し遠出するけど、水分は余り取らない方がいいよ。ここにも、公衆トイレはあるけど、溝だけがあって、個室も仕切りもない。大も小も蓋のない溝に沿って蕩々と流れてゆく。公衆便所にはできるだけ入らないほうがいい」
土岐はそれを聞いて、カラのカップにコーヒーを注ごうとしたウエイターに、
「ノーサンキュー」
と断った。
ウエイターはその場で踵を返した。そこに地元の客が裏口からひとりふらりと入ってきた。どのテーブルに着こうかと腰に手を当てて思案している。その客の後ろから巨漢のベルキャプテンがこちらを覗き込む。手招きをする。
「旦那、タクシーが来た」
と太い人差し指で合図する。
長谷川は小額紙幣でチップを渡す。三輪タクシーに乗り込んだ。
土岐も続いた。ターミナル駅にむかう前に事務所に寄った。
「メールのチェックをしないと」
使い古した黒いショルダーバックに一泊分の下着と髭剃りを詰め込んだ。それから一階のカフェテリアに降りて行った。
アメリカンブレックファストをオーダーする。最初にアメリカンコーヒー。暫くして、こんもりした白っぽい黄身のサニーサイドアップ、大きさも厚さも不揃いなガリガリのベーコン三枚、あばた模様に焼け焦げたトーストが二枚出てきた。
コーヒーを少しすする。ウエイターが注ぎ足しにくる。
スピーカーから半世紀前にリリースされた映画音楽が流されていた。
カフェテリアの木枠の窓から見える空は薄曇りだった。
そろそろ雨季が始まる。ガイドブックに書かれていた。
湿度が高くなっている。夜露が降りた。窓外の花壇の艶やかな緑の肉厚の葉に細やかな水滴がきらめいていた。トーストにバターを塗る。ベーコンを挟んで食べる。その葉の水滴が小さくなって行った。
コーヒーカップを片手に行雲の動きを眼で追った。
「カフィ?サァ」
と銀色のポット片手にウエイターがやって来た。
もう三杯も飲んでいる。
長谷川が腫れぼったい瞼をしてやってきた。
「やあ、おはよう。どう?よく眠れた?」
「ああ」
と土岐が答える。
ウエイターが長谷川の前のからのカップにコーヒーを注いだ。
「今日、列車で少し遠出するけど、水分は余り取らない方がいいよ。ここにも、公衆トイレはあるけど、溝だけがあって、個室も仕切りもない。大も小も蓋のない溝に沿って蕩々と流れてゆく。公衆便所にはできるだけ入らないほうがいい」
土岐はそれを聞いて、カラのカップにコーヒーを注ごうとしたウエイターに、
「ノーサンキュー」
と断った。
ウエイターはその場で踵を返した。そこに地元の客が裏口からひとりふらりと入ってきた。どのテーブルに着こうかと腰に手を当てて思案している。その客の後ろから巨漢のベルキャプテンがこちらを覗き込む。手招きをする。
「旦那、タクシーが来た」
と太い人差し指で合図する。
長谷川は小額紙幣でチップを渡す。三輪タクシーに乗り込んだ。
土岐も続いた。ターミナル駅にむかう前に事務所に寄った。
「メールのチェックをしないと」


