アイキルユウ

「カンパリソーダをお願いします」
と優子は恥ずかしそうに答えた。
 そのときになって、やっと土岐は優子の服装をじっくり見た。Tシャツとバミューダパンツで、Tシャツにはどこかのビーチのイラストがプリントされていた。パイナップル色のバミューダパンツからは、白く柔らかそうな太腿が頼りなげにのぞいていた。それとは対蹠的に胸のイラストは居丈高に突き出ていた。小さな顔と小さな足に挟まれたふくよかな胸が、なんとなく人工的でアンバランスに見えた。
 土岐はカンパリソーダを待っている長谷川と優子をフロントに残して自室に入る。部屋の照明を全て点けた。と言っても、ドアの隣の壁際の小さな照明と、クローゼットの隣の背の高いスタンドとベッドの枕元の小さな照明しかない。椅子は二脚だけ。間に丸い小さなテーブルがあるだけだ。
 隣の部屋に長谷川と優子が入ってくる気配がした。
「どうぞ」
と長谷川の声がする。
 優子を椅子に座らせた。それからベッドのスプリングが激しく軋む音がする。
 長谷川はベッドの上に倒れこむように座り込んだ。
 土岐は急に酔いと疲れが出てきたように感じた。着替えもせずにそのままベッドに仰むけに倒れ込んで目を閉じた。
 しばらくしてドアをノックする音がした。開けるとボーイが薄暗い廊下の背景に溶け込んでいる。ビールとカンパリソーダをトレイに乗せて立っていた。土岐は尻のポケットの財布から小銭をだした。ビールだけ受け取った。ドアを足で軽く蹴って締めた。
 ボーイが隣の部屋をノックする。
 長谷川がトレイを受け取った。テーブルの上に置いた。
 優子が座っていた椅子を引く音がする。優子は立ち上がった。
 土岐は部屋の電気を消した。隣室と繋がっているドアの鍵穴をのぞいた。鍵穴からは隣室のクローゼットしか見えない。
 土岐は隣室との壁際に置かれている箪笥の上に上った。立ち上がると頭が天井に着く。天井から1フィートほどの幅のラーマヤーナの透かし彫りがある。そこから長谷川のベッドが俯瞰できた。
 土岐の眼下で優子が感極まった面持ちで長谷川に抱きついている。ボーイが去るのを待っている。
 そのまま、長谷川は優子の勢いに身を任せる。ベッドの上に抱き合ったまま倒れこんだ。
 土岐は先刻のアミューズメント・センターでの感触を思い出した。