アイキルユウ

「ほんじゃすいません。無免許運転でお願いしますゥ」
「いえ、国際運転免許証は持参しています」
と土岐が答える。
 ジャナイデスカは土足でシートの上を後部座席に移った。
 助手席の長谷川は迷惑そうな顔で、
「おれが運転するよ。無免許だけどな」
とジャナイデスカと席を交替した。
 土岐は助手席に回り込んだ。
「おまえ道知らないだろ。この国の道路にはセンターラインがないから、対向車があると危なくってしょうがない」
と長谷川が言う。
 ジャナイデスカは後部座席に倒れ込む。窓硝子に頬を押し付けてそのままの姿勢でしゃっくりとげっぷを繰り返した。
「ゲップリー・シャックリー、てね。そんな俳優いなかったっけ」
 長谷川がセルモーターを動かし始める。ジャナイデスカは、
「インターネットのワイセツ画像のみすぎかなァ。それともやりすぎかなァ。おんなのインブをみてもさっぱりコーフンしないんですよォ。こういうケイケンってありますかァ」
と落胆したような溜息をつく。
 車が動き出す。
 ジャナイデスカは、
「どうもノーカスイタイのピントがあわないんです。おんなの陰唇がァ松の木の肌かァ、ひびわれた岩肌のようにみえるんです。それは、ただそこにィあるだけのもの。なんの意味もない、無機質なァ、たんなる物質。まゆげのしたに眼があるというようなァ、必然性。またぐらに陰唇があるのは、トーゼンという感覚。意外性もォ、おどろきもォ、感激もォ、な~んもない。娼婦だからそう感じるのかァ。わからない。ダップン、ホウニョウ、ホウヒ、オウト、ラクルイ、ミミアカ、ハナクソ、メヤニ。ハイセツはどれもカイカンだけどォ、シャセイのたのしみがなくなったらァ、なにをイキガイにすればいいのかァ?あきちゃったんですかねェ。まだ30をすぎたばかりないのに。シンコクです」
と気落ちしたように呟く。窓外の闇夜が更に深くなった。
「こんやはァ、いちもつを洗わないことにしました。エイズにはならないとおもうけどォ、カンジダていどにはなるかも。症状がでるかも知れないという不安をたのしみにする。症状から解放されるカイカンをあじわえる。ジギャク的かなァ」
と国道からジャナイデスカの住む高級住宅街への道に長谷川はハンドルを切った。
 ジャナイデスカの沈み込んだ声は別人を思わせた。
 そのトーンは永続しなかった。