「女好きではあるが女を買うことに抵抗があったんでこの二年間一度も来たことがなかった。四年前、アフリカに社用で行ったとき、トランジットで一泊した国があった。その夜、現地事務所の先輩の案内で女を買いに行ったことはあった。水族館の水槽の中のコロシアムの客席のようなところに五十人ぐらいの女たちが三段になって腰を下ろし、番号札を胸につけて落ち着かない様子であたりをきょろきょろ見回しながら座ってた。邦人的な風貌の女を選んだが、抱く気にはなれなかった。支払ったカネと性行為とが等価交換されることに違和感があったからだ。今夜のふたりが前任者が話してた姉妹かどうかはわからない」
土岐は改めて二人の女を見比べた。年齢差があるようには見えた。二人とも暗がりの中で見る角度によって二十五ぐらいにも見えた。三十ぐらいにも見えた。終始つまらなそうに顔を伏せている。目線を合わせることはなかった。
「おれは、こっちの女でいいかな」
と長谷川が若く見える方の女を指で手招きした。
土岐は黙っていた。その女が部屋の中央の遮光カーテンを隅まで引いた。
年上に見える女が、カーテンの内側に入って来た。無表情に、
「シャワーを浴びて」
と土岐に促した。
土岐は綿パンと開襟シャツをソファーの上に脱ぎ捨てた。出掛けにシャワーを浴びてきたが、体全体が薄い汗のべとつく膜ですでに覆われていた。頭髪は避け、顔から下にシャワーを浴びた。さっと流して出ようとした。女が近寄ってきた。背中に黒板消しのような石鹸を押し当てる。こすりつけてきた。
「夕方、浴びてきたばかりだ」
と濡れた背中をくねらせる。土岐は至極迷惑そうに言った。
「背中は洗っていない。べとべと」
と女が軽く背中を叩く。
肩甲骨から下に石鹸がしたたかに塗りつけられた。狭いシャワールームの中で百八十度回転して備え付けの柄のついたブラシで背中を洗い流した。
酔いが回ってきたせいか、赤い光のせいか、土岐には女の肌が白っぽく見えた。Tシャツから出た二の腕やショートパンツから伸びた足は木目細かい。水滴を弾くほど艶やかな皮膚に覆われていた。
アウラットのせいで、この国ではテレビでも雑誌でも街なかでもおんなの剥きだしの腕や足を見ることはない。見るだけで刺激的だ。
土岐は改めて二人の女を見比べた。年齢差があるようには見えた。二人とも暗がりの中で見る角度によって二十五ぐらいにも見えた。三十ぐらいにも見えた。終始つまらなそうに顔を伏せている。目線を合わせることはなかった。
「おれは、こっちの女でいいかな」
と長谷川が若く見える方の女を指で手招きした。
土岐は黙っていた。その女が部屋の中央の遮光カーテンを隅まで引いた。
年上に見える女が、カーテンの内側に入って来た。無表情に、
「シャワーを浴びて」
と土岐に促した。
土岐は綿パンと開襟シャツをソファーの上に脱ぎ捨てた。出掛けにシャワーを浴びてきたが、体全体が薄い汗のべとつく膜ですでに覆われていた。頭髪は避け、顔から下にシャワーを浴びた。さっと流して出ようとした。女が近寄ってきた。背中に黒板消しのような石鹸を押し当てる。こすりつけてきた。
「夕方、浴びてきたばかりだ」
と濡れた背中をくねらせる。土岐は至極迷惑そうに言った。
「背中は洗っていない。べとべと」
と女が軽く背中を叩く。
肩甲骨から下に石鹸がしたたかに塗りつけられた。狭いシャワールームの中で百八十度回転して備え付けの柄のついたブラシで背中を洗い流した。
酔いが回ってきたせいか、赤い光のせいか、土岐には女の肌が白っぽく見えた。Tシャツから出た二の腕やショートパンツから伸びた足は木目細かい。水滴を弾くほど艶やかな皮膚に覆われていた。
アウラットのせいで、この国ではテレビでも雑誌でも街なかでもおんなの剥きだしの腕や足を見ることはない。見るだけで刺激的だ。


