アイキルユウ

と先にジャナイデスカが鼻唄混じりで昇って行った。
 裸電球が入口と階段を昇りきったところに点いていた。狭いブロックの階段の縁が何箇所も欠けていた。足元が暗い。つまづきそうになった。
 ジャナイデスカは手摺につかまる。そっくり返った。二三度千鳥足を滑らせた。
 階段を昇りきる。細い廊下の右側のドアが少し開いた。髪の毛の擦り切れて縮れ上がった男が顔をだした。
「ハーイ!グッイブニング!」
とジャナイデスカは陽気に屈託のない甲高い声をかけた。
「イェッサァ」
と追従笑いを隠さない男は分厚い唇でそれに応じた。
 男が丸い濁った眼で三人を眺め回している。部屋を出ようとした。ドアの隙間から二三才の男の子が衣服の乱れたまま一緒に出ようとして顔をだした。
「へえ~っ、どっちの子かなァ~?ぼくチン」
とジャナイデスカはわざと驚いたような声をだした。
 男は子供の額に手を置く。その部屋に押し戻す。左側の部屋のドアを押し開ける。三人を招じ入れた。
 安ホテルのシングルベットルームほどの部屋に談笑する女が三人いた。とってつけたような歪んだ窓の際の椅子に腰掛けている。紙巻煙草をふかしている。低い嬌声をあげていた。
 陰々滅々たる部屋の照明は小さな丸テーブルの上に茶褐色の笠のスタンドがあるだけ。紫煙も女たちの表情もよく見えなかった。
 ジャナイデスカは男と交渉を始めた。
 男は浅黒い木彫りの仮面を被っているようだ。終始無愛想だった。ジャナイデスカの英語が聞き取りづらいのか、最後まで怪訝そうに顔を顰めていた。言い終えて、
「オ~ケ~?マスタ~」
とジャナイデスカが握手を求める。
 男はその手を放置して、
「オゥケィ」
と座っている女たちに右手の指を三本立てて合図した。
「ボクはおブスのォ、年増チャンのほうにしますからァ」
とジャナイデスカは右側の小太りで白いショートパンツの女にウインクした。人差し指を卑猥に曲げて招き寄せた。
「おブスの年増チャンは、テクニックがあるんですヨォ」
とふたりで睦まじげに左奥の部屋に消えた。
 男は残りの二人の青いショートパンツの女の前にやにわに立ち塞がった。
「ペィ・ファースト!」
と長谷川に右手を差しだした。