店内は床の板目が見えないほど薄暗かった。客の着いているテーブルだけに太い蝋燭の炎が赤いグラスの中でベリーダンスのようにくねっていた。四人がけの丸テーブルが十卓ほど。そのうちの六卓に客がついていた。白皙の欧米人が十人足らず。黄色の東洋人が五六人。浅黒い現地人はひとりもいない。
「たんにィ、電力事情がわるいから、蝋燭にしているのにィ、それがァ、欧米人にうけるなんてェ、皮肉じゃないですかァ」
とジャナイデスカは嬉しそうに席に着いた。
翳のように土岐の後ろに付いてきたウエイターにスペシャルのロブスターとクラブを二つ注文した。
アルコールはハウスワインをデカンタでとることにした。
「そのあとはアラック、ハウスワインがカラになったら」
と長谷川が注文を言う。ウエイターは顔を顰める。人差し指を立てた。
「アラックは密造だから違法です。ここでは売っていません」
とやんわりと注文を受け付けない。どことなくぎごちない。
「君ィ、僕のことよォく知ってるよね。開発銀行に勤めているんだよ。個人ベースでも、接待ベースでもこの店を良く使ってやっているでしょ。単価の高いィ、いい客でしょ?忘れたのォ?」
とジャナイデスカは、陰伏的に強く地酒の提供を要求した。
「わかりました。それではみなさん、三人ともあちらの席にどうぞ」
とウエイターは拍子抜けするほど簡単に折れた。裏口に近い窓際のテーブルを指差した。
そのテーブルに移動した。
ウエイターは赤燐の擦り切れたマッチ箱を胸ポケットから取りだした。軸木を擦ってマッチに火をつける。蝋燭に点燈した。
「例によっていつものようにこの窓からかァ」
とジャナイデスカは腰掛ける。すぐきょろきょろと窓から首をだした。そこにある暗闇の中の鬱蒼たる密林を眺め回している。
土岐は、
@I kill you@
の主がその闇の奥に息を殺して潜んでいるような不気味な殺気を感じた。
「どうやってェ、バイニンとォ、連絡取ってんのかァ、よくわからないんですゥ。携帯電話もっているわけないしィ」
とジャナイデスカは販促記念品の首振り人形のように筋張った首を捻る。土岐はジャナイデスカに質問した。
「携帯電話と言えば、いまお持ちですか?」
ジャナイデスカは不意をつかれてきょとんとしている。
「ぼくの携帯電話?」
「ええ」
「ありますけど、なにか?」
「たんにィ、電力事情がわるいから、蝋燭にしているのにィ、それがァ、欧米人にうけるなんてェ、皮肉じゃないですかァ」
とジャナイデスカは嬉しそうに席に着いた。
翳のように土岐の後ろに付いてきたウエイターにスペシャルのロブスターとクラブを二つ注文した。
アルコールはハウスワインをデカンタでとることにした。
「そのあとはアラック、ハウスワインがカラになったら」
と長谷川が注文を言う。ウエイターは顔を顰める。人差し指を立てた。
「アラックは密造だから違法です。ここでは売っていません」
とやんわりと注文を受け付けない。どことなくぎごちない。
「君ィ、僕のことよォく知ってるよね。開発銀行に勤めているんだよ。個人ベースでも、接待ベースでもこの店を良く使ってやっているでしょ。単価の高いィ、いい客でしょ?忘れたのォ?」
とジャナイデスカは、陰伏的に強く地酒の提供を要求した。
「わかりました。それではみなさん、三人ともあちらの席にどうぞ」
とウエイターは拍子抜けするほど簡単に折れた。裏口に近い窓際のテーブルを指差した。
そのテーブルに移動した。
ウエイターは赤燐の擦り切れたマッチ箱を胸ポケットから取りだした。軸木を擦ってマッチに火をつける。蝋燭に点燈した。
「例によっていつものようにこの窓からかァ」
とジャナイデスカは腰掛ける。すぐきょろきょろと窓から首をだした。そこにある暗闇の中の鬱蒼たる密林を眺め回している。
土岐は、
@I kill you@
の主がその闇の奥に息を殺して潜んでいるような不気味な殺気を感じた。
「どうやってェ、バイニンとォ、連絡取ってんのかァ、よくわからないんですゥ。携帯電話もっているわけないしィ」
とジャナイデスカは販促記念品の首振り人形のように筋張った首を捻る。土岐はジャナイデスカに質問した。
「携帯電話と言えば、いまお持ちですか?」
ジャナイデスカは不意をつかれてきょとんとしている。
「ぼくの携帯電話?」
「ええ」
「ありますけど、なにか?」


