アイキルユウ

 街路灯に寄りかかるようにポニーテールの十五六歳の女の子が佇んでいた。グリーンの浅いキャップを阿弥陀に被っている。同色の警察の制服を着ていた。胸のボタンがはちきれそう。時折、国道の車の流れを見やる。俯き加減に街路灯の周りを徘徊していた。
 

爛熟接待交際と惰性買春(金曜日夜)
 
 ジャナイデスカの仏車が緩やかな坂を駆け上って来た。急ブレーキをかけて停車する。
 少女がスキップしながら近寄った。足元を見ると裸足にビーチサンダルだ。胸ポケットからボールペン、腰ポケットから領収書を取りだした。
 土岐が近寄って覗き込む。日付を書き込んでいた。金額は既に印刷されている。
 少女の汗臭い体臭が土岐の鼻先をよぎった。真っ白な歯を見せている。少女はジャナイデスカに笑いかけた。領収書を切り離して突き出す。
 ジャナイデスカが車から出た。尻ポケットから財布をだしている。怪訝そうな顔つきだ。小額紙幣を差しだした。
 少女は領収書に用意していた釣銭を添えた。
 ジャナイデスカは憮然とした面持ちで長谷川に語りかけた。
「こういうところでェ、なんで駐車料金とられるのかァ、わかりましぇ~ん。はじめてで~す、こんなのォ」
とぼやいた。
 三人一緒にエントランスへ向かって歩いた。
「たぶん、失業対策じゃないか。治安が良くないから」
と長谷川がしょげているジャナイデスカを慰める。衣紋掛のようなジャナイデスカの肩に手を置いた。
「かも、ですねェ。こんなところにィ、自家用車でのりつけるのはァ、外国人だけだしィ、外国人からカネをまきあげることにィ、国民はだれも反対しないしィ。あの子もォ、警察の制服着てるけどォ、どうせアルバイトでェ、警察署長からケンリ買っているんじゃないですかァ」
とジャナイデスカは憤然と悄然の入り混じった尖った顎で少女の方をしゃくった。
「まあァ、この国には私有地はないじゃないですかァ。車がとまっていればァ、どこでも駐車料金をとれるというゥ、リクツですね。レストランのオーナーもォ、一枚かんでんじゃないですかァ。あァ~あ、フユカイだァ。プンプンプンプン」
とジャナイデスカの憤懣は長く尾を引く。なかなか治まらなかった。
「ところで、奥さんは?」
と長谷川が聞く。ジャナイデスカは言いたくなさそうに、
「ひとりで行って、だって」
と答えた。