シャワーを軽く浴びる。土岐は部屋を出た。長谷川の部屋をノックすると、長谷川はすぐ現れた。
ホテルの部屋から屋外に出るにはカフェテリアの隣のレストランの脇を通らなければならない。
ディナータイムになっていた。マネージャーが草臥れてよれよれの赤いタキシードを着込んで通りかかる客を呼び込んでいる。
長谷川はいつもそうしているかのように、
「また、明日くるよ」
とマネージャーに声をかけてホテルの外に出た。
土岐はその後ろについて行く。
エントランスの車寄せの照明が届かなくなると街路は真っ暗。国道に出るまでは手探りで恐る恐る歩かなければならない。長谷川の背中を見失うと、月夜でも国道に寂しく燈る街灯とホテルの車寄せの照明の位置関係だけが頼りだ。
不意に現地人の眼が土岐の鼻先に現れた。眼の中のかすかな明かりがかろうじて識別できた。闇に融合している。眼前にくるまで気が付かなかった。夜道に慣れているのか、闇夜に慣れているのか、現地人は走るようにして歩いて行った。
長谷川とともに国道に出た。薄暗い街路灯の下で土岐は二三分佇んでいた。三輪タクシーは走っていなかった。
「片方のヘッドライトのないものやバッテリーの性能の悪いものが多いんで、日没後は三輪タクシーは都心部を除くとほとんど動き回っていないんだ」
と長谷川が解説する。
「それに日が落ちると出歩く人は極端に少なくなっている。貧しいせいだろうが、この国の国民には夜遊びの習慣がない」
と長谷川が、
「シーフード・レストランへはバスで行くことにしよう」
と言いだした。
土岐は長谷川について行く。近くのバス停に移動した。
薄暗い街灯の下で案内板を見る。都心にむかうバス路線は三系統あった。駅前を経由して海岸線を北上する系統、駅前から内陸部へ東下する系統、首都圏を循環する系統。
五六分待つとボンネットを騒がしく振動させながら空中分解しそうな国営バスがやってきた。
長谷川に続いて土岐が乗り込む。車内は真っ暗だ。ヘッドライトの眩しさから室内灯の消えている車内の闇に眼が慣れるまで手摺にしがみ付いていた。
ホテルの部屋から屋外に出るにはカフェテリアの隣のレストランの脇を通らなければならない。
ディナータイムになっていた。マネージャーが草臥れてよれよれの赤いタキシードを着込んで通りかかる客を呼び込んでいる。
長谷川はいつもそうしているかのように、
「また、明日くるよ」
とマネージャーに声をかけてホテルの外に出た。
土岐はその後ろについて行く。
エントランスの車寄せの照明が届かなくなると街路は真っ暗。国道に出るまでは手探りで恐る恐る歩かなければならない。長谷川の背中を見失うと、月夜でも国道に寂しく燈る街灯とホテルの車寄せの照明の位置関係だけが頼りだ。
不意に現地人の眼が土岐の鼻先に現れた。眼の中のかすかな明かりがかろうじて識別できた。闇に融合している。眼前にくるまで気が付かなかった。夜道に慣れているのか、闇夜に慣れているのか、現地人は走るようにして歩いて行った。
長谷川とともに国道に出た。薄暗い街路灯の下で土岐は二三分佇んでいた。三輪タクシーは走っていなかった。
「片方のヘッドライトのないものやバッテリーの性能の悪いものが多いんで、日没後は三輪タクシーは都心部を除くとほとんど動き回っていないんだ」
と長谷川が解説する。
「それに日が落ちると出歩く人は極端に少なくなっている。貧しいせいだろうが、この国の国民には夜遊びの習慣がない」
と長谷川が、
「シーフード・レストランへはバスで行くことにしよう」
と言いだした。
土岐は長谷川について行く。近くのバス停に移動した。
薄暗い街灯の下で案内板を見る。都心にむかうバス路線は三系統あった。駅前を経由して海岸線を北上する系統、駅前から内陸部へ東下する系統、首都圏を循環する系統。
五六分待つとボンネットを騒がしく振動させながら空中分解しそうな国営バスがやってきた。
長谷川に続いて土岐が乗り込む。車内は真っ暗だ。ヘッドライトの眩しさから室内灯の消えている車内の闇に眼が慣れるまで手摺にしがみ付いていた。


