土岐は石鹸を使ってシャワーを浴びたかった。下着も取り替えたかった。七時にシーフード・レストランで再会する約束をしてジャナイデスカと別れた。ジャナイデスカも一旦借家に帰り、バスタブに浸かりたいと言って走り去った。
長谷川はやれやれというような表情で、部屋に戻りながら、
「おれの部屋にちょっとこないか」
と土岐を誘った。
長谷川の部屋は土岐の部屋の隣だ。
「この部屋とおまえの部屋は、スイートルームになっている。間のドアには鍵が掛っているが、いざというときには、蹴破れる。そういう意味では、何かあっても、お互い安心だ」
「相互警備保障というわけか。そのために、わざわざ隣の部屋を予約してくれたのか?」
「まあ、それもあるが、近い方がいいだろう?」
「まあな。壁の上の透かし彫りも、スイートルームの名残だ」
と長谷川は土岐の部屋と共有している壁を指差す。
土岐が見上げると、天井と繋がる壁に30センチほどの欄間のような透かし彫りがあった。
長谷川は応接セットのソファーに土岐を座らせる。センターテーブルに足を投げ出して話し出した。
「ジャナイデスカは夫人のためと称して借家に家政婦を雇ってるんだ。彼から借家と家政婦を勧められたが、東京で長い間マンション住まいをしていたんで煩わしく思えた。到着早々は国際空港近辺や大使館周辺の夥しい人と家畜と荷車と自転車の雑踏に圧倒された。国際運転免許証は持ってきてはいたが徒歩圏内の事務所の近くのこの安ホテルを下宿とすることにした。部屋代は借家と大差なかった。ただ邦人社会で回り持ちのホームパーティーを開かないですんだ」
土岐は、長谷川の部屋を見回した。
土岐の部屋と同じ備え付けの低いラワン材の箪笥、鏡付きの化粧台、丸椅子、一人掛けのソファー二脚、センターテーブルの小さな応接セット、狭くて軋むシングルベッド、奥行きの浅いワードローブ、二局だけ映る十八インチのテレビ、騒々しいエアコンがあった。
長谷川がTシャツを脱ぎながら言う。
長谷川はやれやれというような表情で、部屋に戻りながら、
「おれの部屋にちょっとこないか」
と土岐を誘った。
長谷川の部屋は土岐の部屋の隣だ。
「この部屋とおまえの部屋は、スイートルームになっている。間のドアには鍵が掛っているが、いざというときには、蹴破れる。そういう意味では、何かあっても、お互い安心だ」
「相互警備保障というわけか。そのために、わざわざ隣の部屋を予約してくれたのか?」
「まあ、それもあるが、近い方がいいだろう?」
「まあな。壁の上の透かし彫りも、スイートルームの名残だ」
と長谷川は土岐の部屋と共有している壁を指差す。
土岐が見上げると、天井と繋がる壁に30センチほどの欄間のような透かし彫りがあった。
長谷川は応接セットのソファーに土岐を座らせる。センターテーブルに足を投げ出して話し出した。
「ジャナイデスカは夫人のためと称して借家に家政婦を雇ってるんだ。彼から借家と家政婦を勧められたが、東京で長い間マンション住まいをしていたんで煩わしく思えた。到着早々は国際空港近辺や大使館周辺の夥しい人と家畜と荷車と自転車の雑踏に圧倒された。国際運転免許証は持ってきてはいたが徒歩圏内の事務所の近くのこの安ホテルを下宿とすることにした。部屋代は借家と大差なかった。ただ邦人社会で回り持ちのホームパーティーを開かないですんだ」
土岐は、長谷川の部屋を見回した。
土岐の部屋と同じ備え付けの低いラワン材の箪笥、鏡付きの化粧台、丸椅子、一人掛けのソファー二脚、センターテーブルの小さな応接セット、狭くて軋むシングルベッド、奥行きの浅いワードローブ、二局だけ映る十八インチのテレビ、騒々しいエアコンがあった。
長谷川がTシャツを脱ぎながら言う。


