天空のほぼ中央に白銀の綿雲が淋しげに漂っていた。南北に横たわっていた。入り日が海中に沈んでゆくのに同調して萎んで行く。そのひとひらの雲の西方はイエローピンクに染まる。東の空はダークブルーにさめてゆく。涼やかな微風が頬と前髪を間歇的に撫でて通り過ぎて行った。
籐椅子に深々と沈めた背中が少し火照っていた。首筋から腰にかけて心地よい疲れが筋肉を包んでいた。ドイツビールのアルコールが胃袋から血管を経巡る。全身の末梢細胞に染み渡ってゆく。喉の渇きを覚えた。グラスのビールはカラになっていた。
ビール瓶を持ち上げた。フロントに屯しているボーイにドア硝子越しに大きく振った。気がつかない。カラのビール瓶を持つ土岐の手をジャナイデスカが握ってきた。
「土岐さん、シーフード・レストランにいきませんかァ。先週はァ、長谷川さんとキングサイズのステーキだったしィ。どうですゥ?」とジャナイデスカが腹筋をトタン板のように波だたせた。筋張った腕で土岐の追加注文を力強く制す。長谷川の同意を求めている。
「クイーンサイズのプライムリブなら、また食べてもいいよ」
と長谷川。執着する様子はない。ジャナイデスカに同意した。
プールサイドを囲繞するピペルの影が背後の夜陰に熔解しつつあった。
ビール瓶の残量を見ようとした。こんもりとした宵闇が瓶の底を覆い隠していた。
長谷川が立ち上がってロッカールームの方に歩きだした。
土岐が長谷川に追随する。プールサイドを振り返る。二本の白熱灯が場違いなほど異様に明るく見えた。
ジャナイデスカが追いかけてきた。
ジャナイデスカの車の中で土岐は隣の長谷川に問うた。
「僕の業務はいつ始まるんだ?」
「もう始まっている」
と長谷川は後部座席からジャナイデスカの後頭部を指差した。
(ということは、ジャナイデスカもI kill youの容疑者の一人であることを意味する)
と土岐は解釈した。動機の見当がつかない。
「動機は?」
と土岐が言った言葉にジャナイデスカの耳がピクッと反応した。
「まあ、夕食をくいながら」
と長谷川は言葉を濁した。
下宿の安ホテルで、土岐と長谷川は一旦降ろしてもらった。
籐椅子に深々と沈めた背中が少し火照っていた。首筋から腰にかけて心地よい疲れが筋肉を包んでいた。ドイツビールのアルコールが胃袋から血管を経巡る。全身の末梢細胞に染み渡ってゆく。喉の渇きを覚えた。グラスのビールはカラになっていた。
ビール瓶を持ち上げた。フロントに屯しているボーイにドア硝子越しに大きく振った。気がつかない。カラのビール瓶を持つ土岐の手をジャナイデスカが握ってきた。
「土岐さん、シーフード・レストランにいきませんかァ。先週はァ、長谷川さんとキングサイズのステーキだったしィ。どうですゥ?」とジャナイデスカが腹筋をトタン板のように波だたせた。筋張った腕で土岐の追加注文を力強く制す。長谷川の同意を求めている。
「クイーンサイズのプライムリブなら、また食べてもいいよ」
と長谷川。執着する様子はない。ジャナイデスカに同意した。
プールサイドを囲繞するピペルの影が背後の夜陰に熔解しつつあった。
ビール瓶の残量を見ようとした。こんもりとした宵闇が瓶の底を覆い隠していた。
長谷川が立ち上がってロッカールームの方に歩きだした。
土岐が長谷川に追随する。プールサイドを振り返る。二本の白熱灯が場違いなほど異様に明るく見えた。
ジャナイデスカが追いかけてきた。
ジャナイデスカの車の中で土岐は隣の長谷川に問うた。
「僕の業務はいつ始まるんだ?」
「もう始まっている」
と長谷川は後部座席からジャナイデスカの後頭部を指差した。
(ということは、ジャナイデスカもI kill youの容疑者の一人であることを意味する)
と土岐は解釈した。動機の見当がつかない。
「動機は?」
と土岐が言った言葉にジャナイデスカの耳がピクッと反応した。
「まあ、夕食をくいながら」
と長谷川は言葉を濁した。
下宿の安ホテルで、土岐と長谷川は一旦降ろしてもらった。


