「ゴルフのメンバーから外れたことで、十九番ホールの麻雀の誘いも来なくなった。でも、これは幸いだった。麻雀は負けても勝っても不愉快だから。負ければカネを取られるのが不愉快だし、勝てば勝ったで対戦相手が自らのつきのなさを呪い、カネをだし渋ぶり盗人のように悪態をつかれるのが不愉快だ」
クラブハウスから優子がもう一人の婦人と談笑しながら揃って出てきた。
背の低い優子が半歩後ろを歩いている。
二人がコートに入ってくるまでジャナイデスカはタオル生地のヘアバンドで長髪を押さえ込み、ラケット面のガットで左手の平を叩きながら待っていた。
「あれが加藤夫人の慶子さんだ」
と長谷川が土岐の右の耳元で囁く。土岐を紹介した。
慶子は色白の長身で、細面で切れ長の眼をしていた。
土岐が少し頭を下げて、上げる。慶子の目線が土岐の右耳を掠めていた。焦点はその少し後ろにある。
土岐が右目の端で、慶子の目線の焦点を伺う。長谷川の思い詰めたような眼があった。
慶子とジャナイデスカがペアを組んで練習を始めた。
「昔、ジャナイデスカ夫婦がペアを組んで敗北のあと大喧嘩して、それ以来この夫婦はミックス・ダブルスのペアを組んだことがない。マージャンやブリッジと同じようにテニスのダブルス・ゲームでも取り繕われていた本性や人格や性格や人間関係が剥きだしになる」
と長谷川は土岐の傍らで耳打ちする。それから、申し訳なさそうに、
「悪いけど、審判をやってもらえるか?いつも、セルフジャッジでやってるんだけど、必ず、インかアウトでもめるんだ。ジャナイデスカと優子さんはペアを組んでも、もめるし、対戦相手になったら、なったでまたもめるんだ」
四人が手にした練習ボールが全部アウトになった。
ジャナイデスカがラケットを回転させた。
「Which?」
と叫び長谷川が、
「Rough」
と答えて土岐の
「Love all play」
でゲームが始まった。
クラブハウスから優子がもう一人の婦人と談笑しながら揃って出てきた。
背の低い優子が半歩後ろを歩いている。
二人がコートに入ってくるまでジャナイデスカはタオル生地のヘアバンドで長髪を押さえ込み、ラケット面のガットで左手の平を叩きながら待っていた。
「あれが加藤夫人の慶子さんだ」
と長谷川が土岐の右の耳元で囁く。土岐を紹介した。
慶子は色白の長身で、細面で切れ長の眼をしていた。
土岐が少し頭を下げて、上げる。慶子の目線が土岐の右耳を掠めていた。焦点はその少し後ろにある。
土岐が右目の端で、慶子の目線の焦点を伺う。長谷川の思い詰めたような眼があった。
慶子とジャナイデスカがペアを組んで練習を始めた。
「昔、ジャナイデスカ夫婦がペアを組んで敗北のあと大喧嘩して、それ以来この夫婦はミックス・ダブルスのペアを組んだことがない。マージャンやブリッジと同じようにテニスのダブルス・ゲームでも取り繕われていた本性や人格や性格や人間関係が剥きだしになる」
と長谷川は土岐の傍らで耳打ちする。それから、申し訳なさそうに、
「悪いけど、審判をやってもらえるか?いつも、セルフジャッジでやってるんだけど、必ず、インかアウトでもめるんだ。ジャナイデスカと優子さんはペアを組んでも、もめるし、対戦相手になったら、なったでまたもめるんだ」
四人が手にした練習ボールが全部アウトになった。
ジャナイデスカがラケットを回転させた。
「Which?」
と叫び長谷川が、
「Rough」
と答えて土岐の
「Love all play」
でゲームが始まった。


