アイキルユウ

 もう一人の少年が入り口と反対側の金網の外にいた。背丈近く生い茂っている雑草の中から首だけだしている。金網にしがみついて、顰め面で土岐を眩しそうに見ている。
「ボールが出たら、いつも買い取っているでしょ」
と思いだしたように、長谷川が詰問するような口調でジャナイデスカに言った。
「いやァあれは手間賃で~す。買ってるわけじゃないですゥ」
とジャナイデスカは少年に親しげに大きく手を振った。
「かれらどうもォ、山のほうから毒蛇をつかまえてきてェ、このへんにィ、はなしがいに、しているらしいですよォ」
とビニールケースからラケットを取りだした。
「ありそうな話だ」
と長谷川は苦笑する。優子が出てくるのを待ちながら、長谷川が話し出した。
「ゴルフ場にもゴルフボールを売りにくる少年たちがいるんだ。ブッシュや深いラフに打ち込むと五、六人の少年が競い合ってボールを奪い合う。買い取ってやると、お追従口で、Super shotと叫んでベストポジションに蹴りだしてくれたり白々しくChampion’s shotと叫んでフェアウエーに投げ入れてくれる。鳥や獣と同じ扱いだからペナルティーなしだ。コンペをやると中には少年を一日雇うプレーヤーもいる。わざとブッシュに打ち込んで、ベストポジションに出してもらう。スーパーショットの連続だ。逆に、ロストボールの購入を拒み続けると、フェアウエーをキープしていても先回りして踏みつけられて目玉にされたり、池やバンカーに蹴り込まれたり、ブッシュの中で牛の糞や蛇のとぐろにはめ込まれたりすることもある」
とゴルフボールを蹴るマネをして、
「そんなときはアンプレアブルの一打罰だ。所長はいつも左右両サイドに一人ずつ雇う。スコアが九十を切るわけだ。そういうゴルフに面白味を感じないんで、接待の場合は別だがプライベートの誘いは極力断ることにしている。そのせいで、『商社マンの風上にも置けない付き合いの悪い奴』という風評が邦人社会に定着したようで、どうしてもパーティーのメンバーが足りないとき以外は誘いが掛からなくなった。でもゴルフ自体は嫌いじゃないんで、最近はもっぱら、樫の木が入り口にある郊外の打ちっ放しのゴルフ練習場で週末に打つことにしてる」
と素振りをして、