「くちゃい。くちゃい。アンシンジラブルゥ~」
と先に入っていたジャナイデスカが大げさに鼻を摘まんだ。
長谷川がラケットとボール缶を抱えてロッカールームを出ようとした。白人が二人、シャワールームから出てきた。
「先週、ふたりで対戦して、ダブルスでラヴゲームで惨めに負けてるんだ。これまでダブルスでは一度も勝ったことがない。パートナーのせいだ。だけど、こないだの日曜日に、赤毛の方のアメリカ人とやって、おれはシングルスで辛勝している。そのとき、アメリカ人に、『もう、ワンセットやろう』と食い下がられたが、素っ気なく断った。負けず嫌いなヤンキーで、かなり悔しがっていたから、I kill youと冗談めいてメールを送信してもおかしくはない。だけど、彼にメールアドレスを教えていないはずだ」
「ハバ・ナイス・ウィケン」
とジャナイデスカがアメリカ人に愛敬たっぷりににこやかに声を掛けた。
「You, too」
と黄色人種を見下したような常套句が返ってきた。
「二人ともこの国の優遇税制を利用して、ヘッジファンドのペーパーカンパニーの管理をしているんだ。詳しいことは言わないんで推察するしかないが、いつも暇そうだから、ファンドマネージャーじゃないらしい。タックスヘイブンのただの管理人らしい。郵便物の管理でもしてるんじゃないかな」
と長谷川が二人に聞こえるように話す。
二人はにこにこしている。日本語は全く分からないようだ。
テニスコートの雨はほとんど乾いていた。数箇所、ジグゾーパズルのピースが抜け落ちたような小さな水溜りがあるだけ。
金網の外に十歳ぐらいの少年がいた。コートの金網の入り口で待ち構えていた。
「旦那、テニスボールを買わないか?」
と長谷川に売りに来た。
三個あるうちの一つを握り締めてみると湿っぽい。プレッシャーボールで、空気がだいぶ抜けている。
「いらない。こんなものにカネが払えるか」
と長谷川が投げ返そうとした。そのボールをジャナイデスカがインターセプトする。小額紙幣をだして全部買い取った。
「よせよ、そんなの使えないよ。無駄ガネじゃないか」
と長谷川が説教する。
「いまァ、ここでェ、買っておかないとォ、あとでェ、金網のそとにでたボールをとられちゃうじゃないですかァ」
とジャナイデスカは買ったばかりのボールを通路を挟んで隣にある無人のプールサイドに打ち込んだ。
と先に入っていたジャナイデスカが大げさに鼻を摘まんだ。
長谷川がラケットとボール缶を抱えてロッカールームを出ようとした。白人が二人、シャワールームから出てきた。
「先週、ふたりで対戦して、ダブルスでラヴゲームで惨めに負けてるんだ。これまでダブルスでは一度も勝ったことがない。パートナーのせいだ。だけど、こないだの日曜日に、赤毛の方のアメリカ人とやって、おれはシングルスで辛勝している。そのとき、アメリカ人に、『もう、ワンセットやろう』と食い下がられたが、素っ気なく断った。負けず嫌いなヤンキーで、かなり悔しがっていたから、I kill youと冗談めいてメールを送信してもおかしくはない。だけど、彼にメールアドレスを教えていないはずだ」
「ハバ・ナイス・ウィケン」
とジャナイデスカがアメリカ人に愛敬たっぷりににこやかに声を掛けた。
「You, too」
と黄色人種を見下したような常套句が返ってきた。
「二人ともこの国の優遇税制を利用して、ヘッジファンドのペーパーカンパニーの管理をしているんだ。詳しいことは言わないんで推察するしかないが、いつも暇そうだから、ファンドマネージャーじゃないらしい。タックスヘイブンのただの管理人らしい。郵便物の管理でもしてるんじゃないかな」
と長谷川が二人に聞こえるように話す。
二人はにこにこしている。日本語は全く分からないようだ。
テニスコートの雨はほとんど乾いていた。数箇所、ジグゾーパズルのピースが抜け落ちたような小さな水溜りがあるだけ。
金網の外に十歳ぐらいの少年がいた。コートの金網の入り口で待ち構えていた。
「旦那、テニスボールを買わないか?」
と長谷川に売りに来た。
三個あるうちの一つを握り締めてみると湿っぽい。プレッシャーボールで、空気がだいぶ抜けている。
「いらない。こんなものにカネが払えるか」
と長谷川が投げ返そうとした。そのボールをジャナイデスカがインターセプトする。小額紙幣をだして全部買い取った。
「よせよ、そんなの使えないよ。無駄ガネじゃないか」
と長谷川が説教する。
「いまァ、ここでェ、買っておかないとォ、あとでェ、金網のそとにでたボールをとられちゃうじゃないですかァ」
とジャナイデスカは買ったばかりのボールを通路を挟んで隣にある無人のプールサイドに打ち込んだ。


