「この国は好きでもないし嫌いでもないんで。本社にどうしても帰りたいとも思わないしとくに赴任したい国があるわけでもないし空港近代化プロジェクトには多少の興味と未練はあるんですが所長が帰国されれば所長代理のわたしがプロジェクトの中心になれることは間違いないとは思うんですが巨額売り上げを本社は高く評価してくれると思いますが帰国すればわたしのように二流大学の文学部卒の学歴でも昇進する可能性もあるような気がしますがここにいれば月給以上の接待交際費を使い豪遊もできる。しかし遊べる場所も遊べることも限られてるんで。この国には多少飽きてきてはいるんですが転勤するかしないかどちらでもいいことなので」
と話している途中で川野は居眠りを始めた。
土岐も何となく眠気を感じる。長谷川の眼もとろんとしている。
土岐は忘れないうちに言うことにした。
「レストランで、大学に語学教材を売り込んだ話をしてたでしょ」
「ああ、日本語学科だ」
「そこの先生たちは君のメールアドレスを知っているだろう」
「ああ。かれらに限らず、取引関係のあった連中には、メールアドレスを教えている。教えなくてもメールを送信しているから、おれのアドレスは知っているはずだ」
と面倒臭そうに答える。それが何か?という顔付きをしている。
「そういう連中からI kill youの脅迫が来た可能性はないか?」
という土岐の問いに、長谷川は大きく首を横に振る。
「あり得ないと思う。顧客にはそれなりのベネフィットを提供している。ここの国の人間の場合は、接待交際費で飲食とお土産とお車代だ。まあ、邦人も同じようなもんだが、歓楽街での接待が加わる」
「君は、そういう供応で、相手は満足していると思っているだろうが、そうではないかも知れない。語学の先生は、そういうことを不快に思っているかも知れない」
「接待されることがそんなに不快か?」
「接待そのものじゃない。君の言い草や物腰だ」
「媚へつらい方のことか」
「と言うか、君は気づいていないかも知れないが、君の話し方には、人を不快にさせるものがあるんだ」
「そう思うのは、おまえだけじゃないのか」
と長谷川は土岐に批判されて気色ばんだ。
「さっきの中華レストランで、一等書記官の博識を褒めただろう」
「イスラムの礼拝のことか?」
「そうだ」
「それがどうした」
と話している途中で川野は居眠りを始めた。
土岐も何となく眠気を感じる。長谷川の眼もとろんとしている。
土岐は忘れないうちに言うことにした。
「レストランで、大学に語学教材を売り込んだ話をしてたでしょ」
「ああ、日本語学科だ」
「そこの先生たちは君のメールアドレスを知っているだろう」
「ああ。かれらに限らず、取引関係のあった連中には、メールアドレスを教えている。教えなくてもメールを送信しているから、おれのアドレスは知っているはずだ」
と面倒臭そうに答える。それが何か?という顔付きをしている。
「そういう連中からI kill youの脅迫が来た可能性はないか?」
という土岐の問いに、長谷川は大きく首を横に振る。
「あり得ないと思う。顧客にはそれなりのベネフィットを提供している。ここの国の人間の場合は、接待交際費で飲食とお土産とお車代だ。まあ、邦人も同じようなもんだが、歓楽街での接待が加わる」
「君は、そういう供応で、相手は満足していると思っているだろうが、そうではないかも知れない。語学の先生は、そういうことを不快に思っているかも知れない」
「接待されることがそんなに不快か?」
「接待そのものじゃない。君の言い草や物腰だ」
「媚へつらい方のことか」
「と言うか、君は気づいていないかも知れないが、君の話し方には、人を不快にさせるものがあるんだ」
「そう思うのは、おまえだけじゃないのか」
と長谷川は土岐に批判されて気色ばんだ。
「さっきの中華レストランで、一等書記官の博識を褒めただろう」
「イスラムの礼拝のことか?」
「そうだ」
「それがどうした」