「だから牛田邸で牛田夫人を抱きかかえて車から降ろした?」
と言い終えて土岐は慶子の質問が来る前に振り返ることもなくそのまま屋外に出た。車の後部座席に飛び乗った。
助手席の長谷川の血相に怖気づいたのか、運転をしながらショスタロカヤは何も話しかけてこなかった。
先週末と同様に黄色い太陽が頭上にあった。精神は暑気をまったく受け付けない状態にあった。土岐がこの国に来て初めて味わう精神状態だった。
五分で駅に着いた。駅前の雑踏にショスタロカヤを残した。土岐と長谷川は改札の駅員にヒジノローマ方面からの列車の到着予定時刻を尋ねた。
駅員は眠そうな眼をしていた。
「駅事務所の中で訊いてくれ」
と言う。出札口で長谷川が尋ねると暫く待たされた。
やがて、
「めずらしく、予定通りです」
という回答を得た。午後一時半の到着予定。あと十分ほどの余裕があった。
長谷川は社用車に戻る。ショスタロカヤにそのことを告げた。
ショスタロカヤは力なくへらへら笑う。
「駅員のやつらの予定通りは遅れが1時間以内という意味だ」
と愉快そうに吐き捨てた。
土岐と長谷川は一旦車内に戻り改札口の見える位置に移動した。エアコンをかけっぱなしにした。列車の到着を待つことにした。
長谷川は黙っていた。
停車しているにも拘らず、車は小刻みに振動していた。エアコンにしては少し振幅が大きい。運転席の足元を見るとショスタロカヤが貧乏揺すりをしていた。
その車内を通りかかる人々が必ず覗き込んで行った。土岐はあまり気にならなかった。
不意に携帯メールの着信メロディーが流れた。
長谷川が携帯メールを開ける。
土岐は後部座席から覗き込んだ。優子からのメールだ。
運転席のショスタロカヤも液晶画面を覗き込んできた。彼には読めない。長谷川は隠さなかった。
@転送メール読んだわ。おめでとう。これであなたと会わないですむ理由が出来たわ。これからは子供を生きがいに生きてゆくわ。だから最後のお願い。わたしのメルアドと着信履歴を全部削除して。あなたとのことはわたしたち三人だけの秘密にすると言った一昨日の約束を一生忘れないで守ってね。土岐さんの口止めをお願いね@
読み終えて、すぐに長谷川はすべてを削除した。長谷川の胸の中に空洞が二つ並んでできたように見受けられた。
(それは当然の報いであり、早晩訪れるものだ)
と言い終えて土岐は慶子の質問が来る前に振り返ることもなくそのまま屋外に出た。車の後部座席に飛び乗った。
助手席の長谷川の血相に怖気づいたのか、運転をしながらショスタロカヤは何も話しかけてこなかった。
先週末と同様に黄色い太陽が頭上にあった。精神は暑気をまったく受け付けない状態にあった。土岐がこの国に来て初めて味わう精神状態だった。
五分で駅に着いた。駅前の雑踏にショスタロカヤを残した。土岐と長谷川は改札の駅員にヒジノローマ方面からの列車の到着予定時刻を尋ねた。
駅員は眠そうな眼をしていた。
「駅事務所の中で訊いてくれ」
と言う。出札口で長谷川が尋ねると暫く待たされた。
やがて、
「めずらしく、予定通りです」
という回答を得た。午後一時半の到着予定。あと十分ほどの余裕があった。
長谷川は社用車に戻る。ショスタロカヤにそのことを告げた。
ショスタロカヤは力なくへらへら笑う。
「駅員のやつらの予定通りは遅れが1時間以内という意味だ」
と愉快そうに吐き捨てた。
土岐と長谷川は一旦車内に戻り改札口の見える位置に移動した。エアコンをかけっぱなしにした。列車の到着を待つことにした。
長谷川は黙っていた。
停車しているにも拘らず、車は小刻みに振動していた。エアコンにしては少し振幅が大きい。運転席の足元を見るとショスタロカヤが貧乏揺すりをしていた。
その車内を通りかかる人々が必ず覗き込んで行った。土岐はあまり気にならなかった。
不意に携帯メールの着信メロディーが流れた。
長谷川が携帯メールを開ける。
土岐は後部座席から覗き込んだ。優子からのメールだ。
運転席のショスタロカヤも液晶画面を覗き込んできた。彼には読めない。長谷川は隠さなかった。
@転送メール読んだわ。おめでとう。これであなたと会わないですむ理由が出来たわ。これからは子供を生きがいに生きてゆくわ。だから最後のお願い。わたしのメルアドと着信履歴を全部削除して。あなたとのことはわたしたち三人だけの秘密にすると言った一昨日の約束を一生忘れないで守ってね。土岐さんの口止めをお願いね@
読み終えて、すぐに長谷川はすべてを削除した。長谷川の胸の中に空洞が二つ並んでできたように見受けられた。
(それは当然の報いであり、早晩訪れるものだ)


