@加藤威雄様・牛田恵一様。急ではありますが、このたび私、長谷川誠は、水野佐知子と結婚することになりました。水野佐知子とは、当地に赴任する以前からの長い付き合いで、この三年間、遠距離愛を育んで参りました。二、三ヶ月後には、当地でささやかな結婚式を挙行する予定ですので、業務多端の折柄とは拝察申し上げますが、その折には、御令閨様共々、ご臨席を賜りたく何卒宜しくお願い申し上げます。追って正式なご招待状をお送り致しますが、本日は取り急ぎ、事前のご報告まで。長谷川誠@
それを見て土岐は、お祝いの言葉でもかけようと思った。長谷川は腕組みをして考え込んでいる。送信し終えて、慶子と優子の反応を想像しているのかもしれない。ヘンサチは慶子の個人アドレスへそのまま、なんのメッセージも書き込まずに転送するのではないか。そうした細やかな思いやりのかけらすらないヘンサチの仕打ちが慶子を愛のない生活に追いやったのかもしれない。
ジャナイデスカも優子の携帯アドレスに転送するかもしれない。彼には着信記録や受信記録を削除して本文の前に一行、
@長谷川さんからこんなメールがあった@
という程度の書き込みをする気遣いはあるだろう。転送メールを受け取った慶子と優子はどういう反応をするか。許婚のような女がありながら、関係を持ったふしだらな長谷川に対して、どういう憎悪を抱くのか。
そう思いながらも土岐は、一昨日の深更、下宿にしているホテルでの出来事が気になった。優子は言いたがらなかった。慶子はどうなのか。長谷川は慶子と連絡を取りたいのではないか。
昼ごろまで、長谷川は何かを考えながら、他のメールを処理した。所長に頼まれた邦人懇談会用の参加者のネームカードを作り上げた。ちょうどそこに、ショスタロカヤがやってきた。それを追いかけるように、先日より早めに所長もやってきた。
所長が着席する。長谷川は彼の机の前に立ち決然と告げた。
「転勤願いは出さないことにしました」
所長は一瞬表情を静止させた。すぐ、さもありなんという面持ちで幾度も頷いた。
それを見て土岐は、お祝いの言葉でもかけようと思った。長谷川は腕組みをして考え込んでいる。送信し終えて、慶子と優子の反応を想像しているのかもしれない。ヘンサチは慶子の個人アドレスへそのまま、なんのメッセージも書き込まずに転送するのではないか。そうした細やかな思いやりのかけらすらないヘンサチの仕打ちが慶子を愛のない生活に追いやったのかもしれない。
ジャナイデスカも優子の携帯アドレスに転送するかもしれない。彼には着信記録や受信記録を削除して本文の前に一行、
@長谷川さんからこんなメールがあった@
という程度の書き込みをする気遣いはあるだろう。転送メールを受け取った慶子と優子はどういう反応をするか。許婚のような女がありながら、関係を持ったふしだらな長谷川に対して、どういう憎悪を抱くのか。
そう思いながらも土岐は、一昨日の深更、下宿にしているホテルでの出来事が気になった。優子は言いたがらなかった。慶子はどうなのか。長谷川は慶子と連絡を取りたいのではないか。
昼ごろまで、長谷川は何かを考えながら、他のメールを処理した。所長に頼まれた邦人懇談会用の参加者のネームカードを作り上げた。ちょうどそこに、ショスタロカヤがやってきた。それを追いかけるように、先日より早めに所長もやってきた。
所長が着席する。長谷川は彼の机の前に立ち決然と告げた。
「転勤願いは出さないことにしました」
所長は一瞬表情を静止させた。すぐ、さもありなんという面持ちで幾度も頷いた。


