「たぶん、ゴンゲイガウじゃないかと思うけど」
と咄嗟に答える。そこでジャナイデスカが立ち上がった。
「すいません。ちょっとトイレ」
ジャナイデスカがトイレに消えるのを目で追いながら長谷川が、
「ゴンゲイガウは片言の英語しか話せない。こんな込み入った話が嘘であると彼女を経由してばれることはないだろう」
ジャナイデスカはすぐ戻ってきた。
「ゴンゲイガウ?あの掃除婦の?あの女ともできていたの?」
そう言われて、長谷川が顔をしかめる。
「できていた?だれが?優子さんが?ゴンゲイガウと?まさか!あんたが、お父さんでしょ。女性は赤ちゃんを守るために妊娠すると、男を拒絶するんですよ」
と長谷川は適当なことを言っている。
「へー、そうなんですか」
とジャナイデスカはうれしいような、かなしいような、なきたいような、なんとも形容しがたい間の抜けた表情をする。体調が変化したから自分を拒絶したのだと納得したようだ。
ジャナイデスカの精神衛生は徐々に回復してきた。昨夜目撃した二人の抱擁は自分の見間違えだと思い始めた。彼の表情が曇天から薄曇になるにつれ、土岐の気分も次第に晴れてくるような気がした。
タンドリチキンは食べ散らかしたまま、店を後にした。店の二階に残った現地人ふたりが、食べ残したチキンを凝視していた。
事務所前でジャナイデスカに車から降ろしてもらった。その場で彼の車が見えなくなるまで見送った。
それから、その場で長谷川は優子に携帯で電話した。
土岐が事務所に入ろうとする。長谷川が引き止めた。
「ちょっと、待ってくれ」
と言う間もなく、優子が出た。
「はい、優子です」
という別誂えのなまめかしい声が長谷川の携帯電話から漏れてくる。
「長谷川です」
と言うと、しばらく、意味の理解できない間があった。
「なんですか?」
「そばにだれかいるの?」
「誰もいないけど、突然だったので」
「きのうの記憶がないんだけどレストラン出てからどうしたの?」
と言いながら長谷川が土岐にめくばせをする。一緒に聞いてくれと言う目だ。
「えっ」
と絶句したなり、彼女は沈黙した。
「いや、べつになにもなかったのなら、それでいいんだけど」
「ちょっと、言えない。あなた、ひどかったのよ。最低」
「ひどかったって、なにが?」
と咄嗟に答える。そこでジャナイデスカが立ち上がった。
「すいません。ちょっとトイレ」
ジャナイデスカがトイレに消えるのを目で追いながら長谷川が、
「ゴンゲイガウは片言の英語しか話せない。こんな込み入った話が嘘であると彼女を経由してばれることはないだろう」
ジャナイデスカはすぐ戻ってきた。
「ゴンゲイガウ?あの掃除婦の?あの女ともできていたの?」
そう言われて、長谷川が顔をしかめる。
「できていた?だれが?優子さんが?ゴンゲイガウと?まさか!あんたが、お父さんでしょ。女性は赤ちゃんを守るために妊娠すると、男を拒絶するんですよ」
と長谷川は適当なことを言っている。
「へー、そうなんですか」
とジャナイデスカはうれしいような、かなしいような、なきたいような、なんとも形容しがたい間の抜けた表情をする。体調が変化したから自分を拒絶したのだと納得したようだ。
ジャナイデスカの精神衛生は徐々に回復してきた。昨夜目撃した二人の抱擁は自分の見間違えだと思い始めた。彼の表情が曇天から薄曇になるにつれ、土岐の気分も次第に晴れてくるような気がした。
タンドリチキンは食べ散らかしたまま、店を後にした。店の二階に残った現地人ふたりが、食べ残したチキンを凝視していた。
事務所前でジャナイデスカに車から降ろしてもらった。その場で彼の車が見えなくなるまで見送った。
それから、その場で長谷川は優子に携帯で電話した。
土岐が事務所に入ろうとする。長谷川が引き止めた。
「ちょっと、待ってくれ」
と言う間もなく、優子が出た。
「はい、優子です」
という別誂えのなまめかしい声が長谷川の携帯電話から漏れてくる。
「長谷川です」
と言うと、しばらく、意味の理解できない間があった。
「なんですか?」
「そばにだれかいるの?」
「誰もいないけど、突然だったので」
「きのうの記憶がないんだけどレストラン出てからどうしたの?」
と言いながら長谷川が土岐にめくばせをする。一緒に聞いてくれと言う目だ。
「えっ」
と絶句したなり、彼女は沈黙した。
「いや、べつになにもなかったのなら、それでいいんだけど」
「ちょっと、言えない。あなた、ひどかったのよ。最低」
「ひどかったって、なにが?」


