と送話器を突風がすり抜けたような深い落胆の溜息をついた。
「あてにできないな。なんとかするか。しょうがない」
と言い捨てて、電話を叩き切った。
長谷川は土岐の顔を見て肩をすくめた。長谷川が受話器を耳にゆるくあてたのは、土岐に聞かせるためだと気付いた。
その後、二三時間、土岐はぼうーっとしていた。何もする気が起きなかった。二日酔いのせいだ。何もすることがなかった。
昼近くになって、ジャナイデスカから長谷川に電話があった。ランチの誘いだ。
朝食を抜いていた。二日酔いにもかかわらず、土岐は空腹を感じていた。
長谷川が了解との返事をする。
程なくして、事務所前で急ブレーキの音がした。確認するまでもない。長谷川は所長にキスケンシュノショへの昼食不要の伝言をお願いして事務所を出た。土岐もそれに従った。事務所のドアを開ける。ちょうどジャナイデスカが車を降りるところだった。
土岐は、
「こんちは」
と力の入らない声をかけてやった。
ほんの一瞬だったが、ジャナイデスカが暗い表情を見せた。先週とは別人だ。ジャナイデスカがひどく大人びて見えた。助手席に長谷川が乗り込む。ジャナイデスカは話しかけてこない。
「土岐も一緒でお願いするよ」
と長谷川が言う。承諾まで一瞬の間があった。
「ええ、どうぞ」
とはいうものの、気の進まないのが感じ取れる。
土岐は後部座席にすまなさそうに乗り込んだ。
車は駅の裏手の商店街にむかっていた。
長谷川がジャナイデスカの肩に手を置いた。
「どうしたの?元気ないね」
「ショック!」
と言っただけで、また黙りこくった。
長谷川はとりつくしまがない。
ジャナイデスカはハンドルを思いつめたように握りしめている。顔の造作は同一人物だが、その表情は見たことのない人間だった。
車は駅の裏側のロータリー内の丸い空き地に停車した。
「タンドリチキンでいいですか?」
という申し出に、土岐は、
(またか)
と思った。彼の提案に従った。そうしてやらなければならないような気分だった。
チキンの専門店は、駅前ロータリーを挟んでちょうど駅舎の正面にある。右手奥に魚市場が見える。黄緑色の土壁の二階建てのローカルレストランだ。
「あてにできないな。なんとかするか。しょうがない」
と言い捨てて、電話を叩き切った。
長谷川は土岐の顔を見て肩をすくめた。長谷川が受話器を耳にゆるくあてたのは、土岐に聞かせるためだと気付いた。
その後、二三時間、土岐はぼうーっとしていた。何もする気が起きなかった。二日酔いのせいだ。何もすることがなかった。
昼近くになって、ジャナイデスカから長谷川に電話があった。ランチの誘いだ。
朝食を抜いていた。二日酔いにもかかわらず、土岐は空腹を感じていた。
長谷川が了解との返事をする。
程なくして、事務所前で急ブレーキの音がした。確認するまでもない。長谷川は所長にキスケンシュノショへの昼食不要の伝言をお願いして事務所を出た。土岐もそれに従った。事務所のドアを開ける。ちょうどジャナイデスカが車を降りるところだった。
土岐は、
「こんちは」
と力の入らない声をかけてやった。
ほんの一瞬だったが、ジャナイデスカが暗い表情を見せた。先週とは別人だ。ジャナイデスカがひどく大人びて見えた。助手席に長谷川が乗り込む。ジャナイデスカは話しかけてこない。
「土岐も一緒でお願いするよ」
と長谷川が言う。承諾まで一瞬の間があった。
「ええ、どうぞ」
とはいうものの、気の進まないのが感じ取れる。
土岐は後部座席にすまなさそうに乗り込んだ。
車は駅の裏手の商店街にむかっていた。
長谷川がジャナイデスカの肩に手を置いた。
「どうしたの?元気ないね」
「ショック!」
と言っただけで、また黙りこくった。
長谷川はとりつくしまがない。
ジャナイデスカはハンドルを思いつめたように握りしめている。顔の造作は同一人物だが、その表情は見たことのない人間だった。
車は駅の裏側のロータリー内の丸い空き地に停車した。
「タンドリチキンでいいですか?」
という申し出に、土岐は、
(またか)
と思った。彼の提案に従った。そうしてやらなければならないような気分だった。
チキンの専門店は、駅前ロータリーを挟んでちょうど駅舎の正面にある。右手奥に魚市場が見える。黄緑色の土壁の二階建てのローカルレストランだ。


